かつて3万円以上が当たり前だったメガネが、今、価格競争の嵐にさらされている。新興企業による5000~1万円の均一価格の低価格メガネが市場を席巻。かつて「安売り」で名を馳せた大手メガネチェーンは青息吐息の状況だ。あまり知られていないメガネ安売り戦争の内幕に迫った。

 「メガネ業界のユニクロ」が快進撃を続けている。「御三家」と呼ばれるジェイアイエヌ、インターメスティック、オンデーズの攻勢はすさまじい。

 「今期の販売本数は150万本を超える。向こう数年で200万本を上回る」と豪語するのは、「JINS」を展開しているジェイアイエヌの田中仁社長。販売本数で業界1位(約200万本)のメガネトップを逆転しようという鼻息だ。

 JINSのメガネ価格は、4990円、5990円、7990円、9990円の4種類しかない。いわゆる「フォープライス」の低価格が強みである。

 昨年5月からは「レンズの追加料金不要」という新たな販売手法を打ち出すとともに、大量のテレビコマーシャルを放映。一気に集客を拡大した。既存店の売上高は1年で4割も増え、昨年2月に39円だった株価はいまや540円に跳ね上がった。1年で14倍に化けた計算である。

 そのジェイアイエヌをしのぐ勢いで新規出店を仕掛けているのが「Owndays」を展開するオンデーズ。4月末までの1ヵ月半でなんと10店もオープンする。ほぼ1週間に1店という驚異的なペースだ。出店計画が固まった店舗だけで100店を超えるというから、現在60の店舗数はいずれ3倍近くに増える。

 「メガネほど簡単で、儲かる商売はない」と田中修治・オンデーズ社長は言ってのける。同社の強みもまた5250円、7350円、9450円というスリープライスの安売りだ。

 オンデーズはもともとビックカメラに出向していた銀行マンが設立した安売りチェーンだったが、フランチャイズ展開で行き詰まり、経営不振に陥っていた。それをジャスダック上場の漫画喫茶「自遊空間」(ランシステム社)の創業メンバーである田中社長が買収し、一気に多店舗展開に乗り出した。

 この2社に、低価格メガネの草分け的存在である「Zoff」を展開するインターメスティックを加えた3社が低価格メガネの御三家。3社合計の販売本数は約310万本で、年間2000万本とされる国内市場の6分の1の規模に達している。

 3社に共通するのは、異業種による新規参入であり、自社生産品を直接販売するSPA(製造小売り)であること。