一葉知秋(一葉落ちて秋を知る)

 一葉知秋(一葉落ちて[天下の]秋を知る)の一葉は梧桐(アオギリ)の葉です。中国南部原産の落葉高木で、葉の黄変が早く、8月末には一部の葉が色を変えて落ちたりします。

 「どんなに暑くとも、落ちた梧桐の葉1枚を見れば、この世に秋が来ていることがわかる」という意味なのですが、そこから少し転じて、未来への予兆、特に滅びの予兆を知る、といった意味に使われたりします。

 でも、もともとは予兆という意味はなく、「手近なものから遠いものを、小さなものから全体を、推察・推論できる」ことを言っています。その事例のひとつに過ぎません。

 前漢 武帝の頃、淮南(わいなん)王 劉安が学者を集めて編纂させた思想書『淮南子(えなんじ)』が元です。

鍋の肉の味は、全部を食べずとも一切れをなめればわかる
空気の湿気は、炭と羽毛(*7)を秤にかければわかる
瓶の中の水が凍っているのを見れば、寒くなったことがわかる

 「小さな事象から、ものごとの大きな根本を悟ることができる」のです。

 秋の空が高いと感じるのは、空が晴れているからでなく雲が高層にあるからでした。暑さ寒さも彼岸までと感じるのは、絶対温度ではなくそこまでの気温との差の故でした。秋の日がつるべ落としなのも同じ。どんどん日没が早くなっていくその差にヒトは反応していました。

一葉知秋。地面にこれまでにない紅葉・黄葉を見つけたら、顔を上げ、周りを見渡して風景を味わいましょう。そしてそこに潜む意味や理由を、探究するのです。

 先日、家の近くの道で見つけたのは、色づいた桜の葉っぱでした。

本来は「男心と秋の空」だった!?<br />~秋のことわざを探究する

 見上げるとその大樹はまだ青々としていましたが、所々もう紅葉しているものも。この原稿は、そんな1枚の葉っぱから始まっています。

*7 炭は空気中の湿気を吸収して重くなるが、羽毛は湿気を寄せ付けないから。

参考サイト・図書
・「日の出入りと南中」暦wiki(国立天文台)
・「過去気象データ検索」気象庁HP
・「黄昏時の長さ(薄明の話)」暦と天文の雑学
・「《辞書を読む》男心と秋の空」素人学者の譫言(うわごと)
・「世界ことわざ辞典」北村孝一編(東京堂出版)
・「故事ことわざ辞典
・「中国故事物語」河出書房新社

お知らせ
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