米倉 ズバリこれもマーケットに聞くしかない、ということ。その1つが、P&Gユニリーバ、ネスレなどがやっているように、小袋で買えるサイズ展開です。小さくバラ売りすることで、いま必要な分だけを安く買えるというコンセプト。これは新しいチャネル・イノベーションだと言えます。

 もう1つ、ラベルの価値も忘れてはなりません。これがうちの商品だという「顔」とも言えるもの。その1枚のラベルがどれぐらいの意味を持つかなんですよね。「剥がしたら同じ」じゃなくて、「貼っているから価値がある」。剥がしても同じにならない価値を作ることができるかどうか。それがブランドを確立するということです。それがコミュニケーションなんですよ。

森辺 たしかに「小分け売り」は、新興国では一般的な販売手法になっています。食品や日用品等の消費財ビジネスでは、いかに多くの小売の間口数を取れるかが成功の鍵を握ります。ASEANでもインドでもアフリカでも、新興国の最大の特徴は、この小売の大半が流通チェーン店のような「近代小売」ではなく、パパママショップのような「伝統小売」であるということです。フィリピンでは、『サリサリ』、インドネシアでは、『ワルン』、インドでは、『キラナ』、南アフリカでは『スパザ』と呼ばれ、数十万店から数百万店存在します。これらの国では8~9割が、この伝統小売の市場なのです。

 この伝統小売に売っていないものは、その市場に存在しないのとほぼ同じことであり、メーカーは自社製品をこの伝統小売に合うように、商品の適合化をしなければなりません。小分け売りは、まさにその商品適合化にあたります。

 新興国の消費者は、先を見越して商品をたくさん買って蓄えておくことを好みません。たとえ1個あたりの単価が上がっても、そのほうが個人や家庭のキャッシュフローに与えるインパクトは少ない。事実、伝統小売で販売されている商品の単価は、近代小売よりも10%程高いのが相場です。P&Gやユニリーバ、ネスレなどは、この小分け売りの先駆け的メーカーであり、ASEANやインドはもちろん、アフリカでも10年以上前から展開しています。一方で日本企業はと言えば、インドネシアでは味の素やマンダム、ポカリスエット、ユニチャームなど、一部の成功例も出ていますが、アフリカに関してはまだ皆無なのが残念です。

 また、ラベルが持つ「ブランド力」に関しても、先進グローバル企業は巧みです。ブランドに関しては、現地適合化ではなく、世界標準化をします。どこの国でも同じブランドコンセプトで標準化することにより、労力やコストを最小限に抑えています。これはアフリカでも同様です。

 ちなみに日本企業の場合は、ブランド力を担保するというとすぐに富裕層をターゲットとし、売り場を近代小売に限定してしまうのですが、さきほど述べたとおり、近代小売の絶対数が少ないのが新興国の特徴です。消費財メーカーは数を売ってなんぼの商売ですから、近代小売に限定していては絶対に利益を生み出すことはできません。だからこそ先進グローバル企業は、ブランド力の維持と販売する小売のレイヤーは切り分けて戦略を組み立てます。この点でも日本企業が学ぶことは多くあります。

「選ばれる力」を手に入れるために

米倉 ただし怖いのは、海外では製品をすぐにスイッチする点。初代iPadで日本のメーカーのバネが採用されて一気に売上げを伸ばしたことがありましたが、iPad miniになったらスイッチされて、月産300万がゼロに。だからこそ主導権を握る必要があります。「この部品を中心にモデルチェンジを考えないと」と思われるだけの価値を持っていないとなりません。

 だからこそ日本が海外で勝負すべきは「ソリューションの提供」です。「日本が来てくれたから本当に良くなった」「良いものを持ってきてくれた」となるようなもの。競争力というのはつまり、“選ばれる力”なんです。われわれは競争力というと、つい人を蹴落とす、のし上がる力だと思いがちですが、そうではありません。