雇用形態の変化は平均労働時間にも影響を与えた(図表4)。まず短時間労働者が増加し、そのウェイトが高まったことが、雇用者全体の一人あたり平均労働時間を押し下げた。さらに、短時間労働者の中でもより労働時間の短い労働者が増えたことが、一人あたり平均労働時間をもう一段押し下げることになった。こうした影響で、足元の平均労働時間はリーマンショック前から5%近くも減少した。

(出所)厚生労働省「毎月勤労統計調査」

 その結果、雇用者数は大幅に増加したにもかかわらず、雇用者数×労働時間で見た労働投入量はリーマンショック直後とほぼ変わらない低水準にとどまっている(図表5)。労働投入量で見ると、雇用の回復感はそれほど強くないことが分かる。

(出所)厚生労働省「毎月勤労統計調査」、総務省「労働力調査」

労働時間の短縮が平均賃金を下押し
短時間労働者しか雇えないほど人手不足

 人口高齢化、人口減少が進む中、従来のようにフルタイムで働ける労働者が減少しており、企業は短時間雇用者を複数雇うことで労働力を維持している。雇用者数で見れば、リーマンショックはもちろんのこと、これまでの景気拡大局面すらも大きく超える高水準にあるが、マクロで投入された労働量はリーマンショック直後からほぼ変わっていない。

 そのため、名目雇用者報酬も増加こそしているものの、いまだにリーマンショック前の水準には及ばない。実質ベースでは、これほど雇用者数が伸びているにもかかわらず、賃金の伸び悩みや円安による物価上昇をカバーしきれず、減少に転じているほどだ。こうした雇用の内容の変化が、雇用者数と消費の温度差につながったとみられる。

 実際に足元の賃金統計を確認しても、雇用者数の増加ペースに対して、賃金は回復こそしているものの、ペースは鈍い。一般労働者について見れば、春闘の効果もあり、ここのところの所定内賃金(いわゆる基本給部分)は上昇基調が続いている。また、人手不足もあり、パート労働者の時給も上昇している。しかし、パート労働者の平均労働時間減少により、月給ベースではパート労働者の所定内賃金は伸び悩んでいる。