現代は社会の転換期「断絶」の
ただ中にあると指摘
ドラッカーのいう「断絶」とは、「地殻の変動」といった意味です。先進社会は経済構造も産業構造も前の時代とはまったく異なる、非連続の「断絶の時代」に突入しようとしている、といった指摘です。そうして、主な断絶は4つの分野で見られるとして、以下の地殻変動を挙げています。
(1)新技術、新産業が生まれる。
19世紀半ば以降の発明発見に基づいていた今日の重要産業や大事業が陳腐化し、これからの新産業は20世紀の知識によることになる。
(2)世界経済が変わる。
世界は1つの市場となり、グローバルなショッピングセンターとなる。
(3)社会と政治が変わる。
最大の中央集権組織である政府に対する幻滅が広がり、その能力が疑問視される。
(4)最も重要なこととして、知識の性格が変わる。
すでに知識が、中心的な資本、費用、資源となった。知識が、労働と仕事、学ぶこと、教えること、知識自らの本質とその使い方を変えた。
今日われわれが目にしているあらゆる激動がこの断絶によってもたらされているとして、ドラッカーはいち早く「今日の転換期」の到来を世界に知らしめました。ドラッカーによれば、「今日の転換期」は1965年頃に始まり、2025年頃まで続く。そしてこの峠の始まりを「断絶」と認識し、警告を発したのです。ドラッカーは本書執筆の狙いを、以下のように記しています。
本書の関心はすでに起こったことおよびその課題と機会にあった。本書は明日の世界の急所を探した。明らかであるにもかかわらず、まだ知覚されていないものを探した。本書の特質は予測ではなく観察にある。
本書で述べたものはすでに起こった事実であるがゆえに消え去るものではない。解決すべき問題はますます重要性を増す。
だが本書は何が起こるかは教えない。何に取り組まざるをえないかを示した。同時に何が起こりそうもないかを示した。本書の意義は、これからの時代はいわゆる未来予測のいうところとは異なり、これまでの趨勢とは違うものになることを示したところにある。われわれは、新しい趨勢が現れ、新しい問題に直面させられることを覚悟しなければならない。(391ページ)