ドラッカーをよく知りたい、ドラッカーの思考を理解したい、その希望を叶える本がある。ドラッカーはどんなことを体験し、何を考えながら著作を書き上げたのか。ドラッカーのバックボーンを知ることで理解を深めることができる。『ドラッカーはなぜ、マネジメントを発明したのか』の著者、ジャック・ビィーティ氏に話を伺った。(聞き手:大野和基)

映画「もしドラ」で話題のドラッカーは、
90年代のアメリカですでに映画で話題になっていた

――ピーター.F.ドラッカーに関心をもったきっかけは何でしょうか。

 1990年代の非常に早い時期に、ドラッカーが『アトランティック・マンスリー』に執筆したことがきっかけです。私が編集したのですが、魅力的な記事でした。それは情報化時代がいかにして社会にいろいろな種類の影響を与えるかという、社会変化についての記事でした。彼のビジョン、洞察力、息遣いすべて非常に魅力的でした。

 当時、私は『ウォール・ストリート・ジャーナル』に掲載されたドラッカーの記事をときおり読んではいましたが、それ以上のことは何も知りませんでした。ドラッカーに魅せられた私は、彼の思想を知るのに役立つ本を探しましたが、そのような本はありませんでした。それで、自分で書こうと決意したのです。

――『アトランティック・マンスリー』の記事ですが、ドラッカー自身が寄稿したのですか。それとも編集部が依頼したのですか。

 ドラッカーが編集長とコンタクトしていて、編集担当が私に回ってきました。たとえ彼が自分で寄稿したとしても、どの編集者でも発表したいと思ったでしょう。掲載することにリスクはありませんでした。

『ドラッカーはなぜ、マネジメントを発明したのか』の著者ジャック・ビーティ氏

――ドラッカーはすでに著名でしたか。

  日本における人気ほどではありませんが、著書はたくさんあったし、名前はよく知られていました。

 例えば、1980年代の後半か90年代の最初に作られた『バルセロナ』という映画で、「ドラッカーを読んだことがありますか」とか「これはドラッカーが書いていました」などと登場人物が話しています。映画を観た人は誰でも何のことを言っているかわかっていました。それほどドラッカーの名前は知られていました。