80円から250円へ徐々に値上げ、
超有名になった観光地のあげまんじゅう
これから紹介する企業は、扱っている商品が観光地での名物「あげまんじゅう」でした。
1個80円という値段で安く売っている理由そのものが見当たらなかったので、値上げを勧めました。
経営が苦しいとのことで知人の紹介で経営相談に来られた2代目社長さんですが、そんな状態なのに「なぜその値段で販売しているのか」と聞いたら、答えが「昔からその値段で売っているから」だったので、少しびっくりしたことを覚えています。
観光地でもあり、基本的に新規のお客様だけを対象にすればよい商売なので、とにかく値段を1個80円から120円に値上げしてもらいました。
お客様の注文を受けてから油でまんじゅうを揚げるので、行列がすぐできることがわかりました。そこで、並んでいるお客様に、おまんじゅうができた由来や食べ方などを詳しく説明することを追加。予想した通り、値上げしたその日から販売個数が伸び、収益性ががらりと変わりました。
値上げに対して両親やお店の社員さんたちはかなり反対したようですが、勇気を持った決断の結果、急速に経営状態が向上、値上げによって利益が一気に3倍になりました。
値段を上げて利益が出始めると、お店に活気がよみがえり雰囲気が一変したそうで、販売個数がますます伸び、行列が絶えない店へと変身しました。
地元メディアがこのお店を取り上げたことをきっかけに、さらに販売個数が伸びるというプラスがプラスを生む状況の中、値上げこそが正しいと理解した2代目経営者は徐々に値上げを繰り返し(途中から相談もなしにこれでもイケるかもと考えながら値上げをしていったそうですが)、それでも店頭から行列は絶えず、今では1個250円という値段で販売しています。
観光地ビジネスは、顧客がそこに来るまでにかなりの時間とお金をかけてやって来ているわけですから、通常の行為(買い物)ではなく、特別の行為(買い物)をしたいと思っているということが理解できたら成功します。
つまり、せっかく来たのだから普通の買い物(おまんじゅうを1個80円で買う)ではなく、特別の買い物(おまんじゅう1個に250円も払う!)をしたいわけで、普通の値段ではなく特別高いほうがかえって顧客の心にマッチするわけです。
こちらの会社は最近新たにかなり広い土地を購入、観光地の商店街の小さな本店とは別にもう一軒お店を作る計画に入っています。
80円と250円―原価は同じどころか販売量が増えたことでどんどん下がり、利益は8倍近くになったそうです。「当初の値段だったら、今の利益を生むためには、人も場所も仕入れも増やして何倍もの個数を売らないと無理だった」と、昔を振り返っているそうです。
では、なぜうまくいったのかを、しくみから探っていきましょう。