採用(=入口)さえしっかり押さえれば、後はどうにでもなる

 採用は労務管理の「入口」です。入口を通過した後は、出口に向かって進んでいきます。そして出口は、定年や転職などで会社を辞めるときです。採用の戦略を立てる際には、この入口から出口までの長期スパンで考えることがポイントです。

第1回目でも触れましたが、入口から出口まで、つまり募集・採用から入社後の配置、教育、評価、昇進・昇格、休職、退職までマネジメントすることを「労務管理」といいます。この労務管理を制するには、やはり最初の入口となる募集・採用が最も重要であり、採用を制する者が労務管理を制するといえるでしょう。

 マーケティングを川の流れにたとえたとき、上流を押さえることが重要であるのと同様に、極端ないい方をすれば、労務管理も入口さえしっかり押さえておけば後はどうにでもできるものです。先ほど取り上げた実例も、この入口に対する意識の低さがもたらした結果といえます。

 入社後に採用者がパフォーマンスを発揮できない、求める人材と本人の資質とのギャップに悩む、といったさまざまな問題は入口の強化によってなくなるはずです。

 それは社員教育の面から考えても明らかです。同じ社員教育を行っても、実際に伸びる人と伸びない人がいます。当然、この差は本人の能力によるものですから、採用のレベルを上げれば、その後の教育でも高い成果が得られる人材を確保しやすいということになります。

入口=採用の重要性を認識し、「君はやる気があっていい。明日から来てもらおう」といった感情論にまかせた採用はもうやめましょう。ただ人員を補充するだけのやり方では、人材のミスマッチが起こり、会社は思うように利益を上げられなくなってしまいます。

 人材獲得競争では劣勢の中小企業こそ、採用を企業戦略の最重要課題に掲げ、しっかり取り組まなければ生き残れない時代なのです。

 経営権の中には人事権があり、その人事権の中に採用する権利、つまり採用権も含まれているのですから、私はセミナーや個別相談でも「経営者として採用権もフルに活用しましょう!」と繰り返しお話をしています。つまり「就活」をする学生に対して、企業側も「採活」をしなければいけないのです。

 とりあえず採用して試用期間で様子を見ればいいと考えるのは大間違い。採用の段階でダメ社員をシャットアウトしたほうが結果的に得なのです。

 次回は、就活生の心をつかむノウハウを披露します。