知識と知識の「結びつき方」はコントロールできない
頭の中にはさまざまな情報・知識があるのに、それらがうまく結びついたり結びつかなかったりするのはなぜなのか?
この問いは、究極的には脳の機構に関わることであり、現在の科学の知見ではまだブラックボックスだとされているところである。
こうした「知識の組み合わせ」がどのようにして起こるにしろ、たしかなのは、この組み合わせ自体にも「バカの壁(見落としを生む一種の先入観)」が入るということである。
たとえば、因数分解という知識を身につけても、多くの人はそれを数学の範囲でしか使えないものと考え、まったく別の分野の知識と組み合わせようなどとはしない。
僕が博報堂にいたころ、何か新しい製品のネーミングを考えるようなシーンでは、カードとボックスを用意するのが常だった。
ネーミングというのはたいていの場合、2つ以上の情報の「組み合わせ」からつくられるが、いくらメンバーがフラットな視線でブレーンストーミングをしたところで、その組み合わせには必ず「バカの壁」が入ってしまう。
そこで膨大な数のカードそれぞれに1つずつ適当なワードを書き込み、それをボックスから2枚ずつ無作為に引くことを繰り返して、とにかく組み合わせの数を増やすのである。
もちろん、カードにどんな言葉を書くかという時点でも、何らかの「バカの壁」が入っている可能性は高いが、我々のような凡人にとってはかなり有効な方法である。
知恵のある人は「学ぶとき」に工夫している
そうはいっても、知識の組み合わせを「どう増やすか」については、僕たちが直接手を加えることはできないかもしれない。だが、知識が「どうすれば結びつきやすくなるか」については、一定の方法はたしかにある。
まず言えるのは、知識はいったん学ばれると、固定化され、ほかの知識と結びつきづらくなるということだ。だから、僕たちにチャンスが訪れるのは、それを初めて学ぶときである。
「喉元過ぎれば熱さを忘れる」ではないが、学習プロセスにおいて最もストレスがかかるのは、初めてそれを学ぶときであり、だからこそ僕たちはその知識を鵜呑みにするように指導されてきた。しかし、「これはこういうものなんだ」と鵜呑みにして学んだ知識というのは、まずほかの知識と結びつくことはない。