自由化、規制緩和の先は、
デフレ、戦争へという末路

吉原 そうですね。それに経団連といっても彼らは大企業を代表していません。それと安倍政権は、選挙のときは「経済第一」「TPPは反対」と言っておきながら、権力を握ると急に安全保障の話を持ち出し、TPPはアメリカの言い分を丸呑みにしてしまいました。TPPというのは日本では自由化、規制緩和だと考えられています。

 でも、TPPの真相は、日本は自由化や規制緩和をさせられ、アメリカにとっては保護主義です。他国から利権を収奪するための保護主義政策なのです。

広瀬 そうです。あのルールを1つずつ見れば、アメリカに都合のいいルールだけを取り込んで、黒幕の多国籍企業が利益を得る、それがTPPです。

吉原 そもそも自由化、規制緩和をやっても顚末は見えています。竹中平蔵さんが講演で力を込めて「0.1%でも高い経済成長が大事だ。だから規制緩和が大事だ」と言っていました。

 私も経済成長を決して否定しているわけではありませんが、「だから規制緩和が大事」という竹中さんの論には飛躍があると思います。

 歴史を見ると、今から100年ほど前にイギリス帝国による第1次グローバリゼーションがありました。経済がグローバル化して世界中でものが動いた結果、イギリスをはじめとする先進国まで生産過剰になって、世界的な恐慌や大デフレにつながり、第一次大戦、第二次大戦という戦争を引き起こしました。

 今の第2次グローバリゼーションも同じです。
 1970年代までは経済成長してきましたが、規制緩和を行ったために世界経済は1990年代から失速しました。韓国は経済破綻しましたし、中南米諸国の経済成長は止まりました。そして湾岸戦争が起きました。
 自由化、規制緩和が、実は世界中にデフレと大不況をもたらして、戦争によって終わるという帰結です。歴史は繰り返しているのです。

広瀬 湾岸戦争は、米ソの冷戦が終って、軍需産業の崩壊も原因でした。
 私は吉原さんが登場してはじめて信用金庫が何かを知って城南に口座を開いたのですが、「原発反対」を高らかに宣言した後、城南信用金庫の預金者が増えていますか?

吉原 はい、増えました。心ある人たちがファンになっていただいています。
お金がある人も、ない人もファンになっていただいています。それは、どちらもありがたいと思います。

 私は多くの人に応援していただいていることを業界でも話しています。
 それによって、ほかの地方の信用金庫にも、協同組合の理念をもっと大事にしてもらいたいと思っています。

広瀬 そうですね。

 次回がいよいよ最終回です。なぜ、3人の元首相が「脱原発」に転向したかと、いよいよ2016年4月1日に迫った電力自由化で広がる知られざる世界についてお話ししましょう。

再稼働、安保、TPP……<br />安倍“駐日アメリカ大使”の本当の罪<br />――吉原毅×広瀬隆対談【パート4】

(つづく)