フレームワークをめぐる「学ぶ」vs「考える」

【藤原】僕の読み方が間違ってたら言っていただきたいんだけど、僕のこの図式を津田さんの本に当てはめると、成長社会側が「学ぶ」、成熟社会側が「考える」でいいんですよね?

【津田】そうですね、そう言っていただいてけっこうです。の中では、
・学 ぶ=既存のフレームワークに当てはめて答えを導く
・考える=自分でつくったフレームワークから答えを導く
と定義しています。

【藤原】「もっと考えて仕事しろ」と言われると、みんな「何言ってるの、オレは十分考えてるよ。昨日もじっくり考えてきたし」なんて言う。「でも、それって『考える』とは言わないんじゃないの?」――っていう津田さんの指摘は、まったくその通りだと思うんだよね。
みんな「考えている」と思っているけど、本当はパターンに当てはめて処理しているだけなんです。

本当の頭のよさは「健全な腹黒さ」と「遊び」から生まれる津田久資(つだ ひさし)
東京大学法学部、および、カリフォルニア大学バークレー校経営大学院(MBA)卒業。
博報堂、ボストン コンサルティング グループなどで一貫して新商品開発、ブランディングを含むマーケティング戦略の立案・実行にあたる。
現在、AUGUST-A株式会社代表として、各社のコンサルティング業務に従事。また、アカデミーヒルズや大手企業内の研修において、論理思考・戦略思考の講座を多数担当。表層的なツール解説に終始することなく、ごくシンプルな言葉で思考の本質に迫る研修スタイルに定評があり、のべ1万人以上の指導実績を持つ。
著書に『あの人はなぜ、東大卒に勝てるのか』『世界一わかりやすいロジカルシンキングの授業』などがある。

【津田】そうなんです。

【藤原】どのパターンにはまるのかを選んでいるだけの話。それを僕は「CPUが働いてない状態」と呼んでいます。いまの子どもって、ニンテンドーDSのボタンを1秒間に8回も押すそうなんですけど、それって「考えて」ないですよね。パターンを見て反射しているだけで、CPUは働いてない。

その考えでいけば、津田さんはCPUを働かせることを「考える」とおっしゃっていて、しかも「働かせるモードに持ってくための手法が、フレームワークとロジックツリーですよ」ときっちり示している。

【津田】おっしゃるとおりです。おかげさまで「普通のロジカルシンキング本とは違っていて面白かった」という声をけっこういただいています。

【藤原】でも一方で、津田さんが読者に求めていることって、じつはものすごく難しいことですよね。僕は講演なんかでは、このフレームワークの真ん中を波線で区切って、シャレで「これが養老孟司さんの言った『バカの壁』だ」って言うんです。

この壁を崩すにはイマジネーション(想像力)が必要なんだけど、それを鍛えるのは大変なことだよ、と。
本書ではそれを「大変」で終わらせずに、相当綿密な手続きを踏みながら、ちゃんとマネできるような形で書いてある。だけど、正直なところ、これをマネできる人ってどれぐらいいるのかな……。

【津田】たしかに「“学ぶ”から“考える”へ」と言ったとき、一種の「力」が必要だと思うんです。
力というのは「能力」と「意識」という2つの掛け算ですよね。能力を伸ばすことは本ではそう簡単にはできませんが、やれることは何かというと意識付けです。
とりあえず意識を高めていただいて、読んでくれた方に少しでも考える力が身につくといいな、という気持ちで書きました。