“何故、米国民はオバマ大統領を選んだのだろうか?”

 その答えは、おそらく1つではない。ただ、最も重要な理由は、オバマ大統領が黒人という、歴代大統領と大きく異なる要素を持っているからだろう。つまり、米国民は、今までの大統領とは違った“人”を選んだのである。

 ところが、当初圧倒的な期待を背負って登場したオバマ大統領の支持率が、足元では早くも急低下し始めている。これはいったい、どうしたことだろうか? 今回は、オバマ政権の意義とその苦悩の本質を、改めて振り返ってみよう。

 米国民がオバマ氏を選んだ背景には、何より「米国が抱える構造的な問題を解決して欲しい」という熱望があった。その構造問題を一言で表現するならば、“米国のモノ作りに向かない気質”と呼べばよいだろうか。

 第二次世界大戦が終焉を迎えたとき、米国は世界をリードするノウハウや技術を持っていた。だからこそ、世界の覇権国として君臨することができたのである。

 ところが、時間の経過に伴って、日本やドイツなどが戦後の復興から立ち上がり、米国経済を追いかけた。その結果、日本は、1980年代半ば、一時的に1人当たりのGDPで米国を凌駕するに至った。

 ただ、当時の米国は不動の覇権国だった。「日米半導体協議」などのケースを見てもわかる通り、“力”によって、日本の追随を抑えることができたのだ。 そしてその後も、“IT”や“金融テクノロジー”などの新しいコンセプトを作り出すことによって、世界における地位を確保し続けることに成功した。

 ただし、そのプロセスの中で、米国は“モノ作りに向かない”という気質を変えることができなかった。その結果、「自国で作るモノよりも、多くのモノを消費する」という、過剰消費の構造が残ってしまった。

 自分で作る生産物より、多くの製品を使うということは、単純に考えると、「借金をしてモノを買う」ということになる。米国経済には、長い間に“借金体質”が染み付いてしまったのである。

 問題は、米国の得意とする金融が崩れたことによって、米国民にお金を貸してくれる人が少なくなってしまったことだ。そうなると、借金をしてモノを買っていた習慣を、改めなければならない。今、米国はその苦しみと戦っているのである。