「水」の足りない未来が
15年後にやってくる?
また、農業における水利用の効率を高めなければ、現在約3兆1000億立方メートル(世界の取水量の70%弱)の使用量は、2030年には4兆5000億立方メートルに達するだろう。現在、人類の40%は国際河川流域またはその近くに住んでおり、河川水への依存が高く、水の需給の変化の影響を受けやすくなっている。
経済協力開発機構(OECD)の推測では、現在のトレンドが続けば、2030年には世界の人口の半分近くが、深刻な水ストレス(1人当たりの年間利用可能量が1000立方メートル以下)にさらされる。肥沃な土地はすでに開墾されているから、新たな耕作地が見つかる可能性は乏しい。だとすれば、生産効率を高めることが、世界の食料ニーズに応えるうえで決定的に重要になる。
この点で特に心配なのはアフリカだ。南アジアと南アメリカでは1人当たりの農業生産量が増えてきたが、アフリカだけは最近、1970年代の水準に戻ってしまった。アフリカの多くの国は、農業生産に適した環境が整っていない。種子や肥料を港から内陸部に運ぶ交通網が貧弱で、統治も脆弱なことが多い。食料のサプライチェーン・マネジメントを少し改善するだけでも、多くの無駄をなくして、生産量を増やし、人口増加に伴うプレッシャーを緩和できるだろう。
小麦の価格は今後も大きく変動する可能性が高い。主な生産地である中国、インド、パキスタン、オーストラリアが水ストレス下にあり、気候変動の影響も受けやすいからだ。特に食料価格の高騰に弱いのは、バングラデシュ、エジプト、ジブチ、スーダンなど食料の多くを輸入に頼る貧困国だ。
これらの国にとって、食料価格の高騰に対する最大の防衛策は、日常的な食料品に対する補助金をいま以上に拡大することだ。しかしこれらの国の多くは、現在歳出削減に取り組んでおり、補助金拡大は容易ではない。