自己テストは、活用しだいで強力な学習テクニックになる。なかでも最も効果的なのが、自分の知らないことをテストする「事前テスト」だという。なぜ、事前テストが効果的なのか。米国ベストセラー『脳が認める勉強法』より、内容の一部を特別公開する。

間違った推測をすることで
正解する確率が高まる?

 何かの手違いで、新学期の初日に期末試験の問題を手に入れてしまったらどうする?教師の誤送信により、あなたのメールボックスに問題が送られてきたと想像してみてほしい。問題が手元にあると、どんな影響が生まれるだろう?期末試験に向けた勉強の助けとなるだろうか?

 もちろん、助けとなるだろう。問題を注意深く読めば、何に気を配り、何をノートにとればいいのかがわかる。授業中は、試験問題に関係することを教師が口にするたびに耳が反応する。几帳面な性格であれば、期末試験までに全問題の正解を暗記してしまう。そうして期末試験の当日、誰よりも先に回答を終え、Aの成績を確信しながら悠々と教室を出る。

 当然、これは不正行為である。

 では、新学期の初日、期末試験とまったく同じ問題ではないが、その学期で習うことを包括的に網羅した総合テストを受けた場合はどうか?いい点数がとれないのは確かだろう。1問も理解できないかもしれない。

 とはいえ、この連載の第3回で紹介した「テストの実施」のことを思えば、テストを受けるという経験によって、翌日からの授業に対する姿勢が変わる可能性がある。

 こういう考えから、テストを実施する効果として、新たに「事前テストの実施」が提唱されるようになった。

 ローディガー、カーピック、ビョーク夫妻、コーネルといった心理学者たちは、さまざまな実験を通じてあることに気がついた。状況によっては、記憶を検索して失敗しても(つまりは答えを間違っても)、単なる失敗で終わらない。失敗どころか、検索を試みたことによって考え方に変化が生じ、問題に含まれる情報が保存される。

 テストの種類にもよるが、選択形式の場合はとくに、答えを間違うことが学習となる。この学習効果は、回答後すぐに正解を教わったときにとくに顕著となる。

 要するに、「間違った推測」をすることで、次のテストでその問題もしくはそれに関係する問題に正解する確率が増すのだ。

 ずいぶん漠然とした話だと思うかもしれない。自分の知らないことをいきなりテストとして出題され、間違った回答をする──こう言われると、有効な学習手法というよりも、やる気を失い失敗するためのレシピのように思えるだろう。この手法のよさを知るには、あなた自身で試すのがいちばんだ。

 試すとは、自分自身にテストするという意味だ。テストの内容は、あなたがよく知らないことであれば何でもいいし、短いテストでかまわない。

 私はアフリカ諸国の首都をよく知らないので、それを例に話を進めよう。アフリカの国を12選び、友人に5択形式でそれらの首都を答える問題を作ってもらう。1問につき、考える時間は10秒。1問解くたびに、友人に正解を教えてもらう。

 手順はこれでわかったと思う。それでは、携帯電話やノートパソコンは脇に置いてやってみよう。問題の例をいくつかあげておく。

Q.ボツワナの首都は?
●ハボローネ
●ダルエスサラーム
●ハルゲイサ
●オラン
●ザリア
(友人:「正解はハボローネ」)

ガーナの首都は?
●ウアンボ
●ベニン
●アクラ
●マプト
●クマシ
(友人:「正解はアクラ」)

レソトの首都は?
●ルサカ
●ジュバ
●マセル
●コトヌー
●ンジャメナ
(友人:「正解はマセル」)

 こういう問題を12問作るのだ。そして、テストをして答えを想像してみよう。あなたも私と同じでアフリカ諸国の首都に詳しくないなら、ほとんどの答えを間違ったはずだ。

 このテストを受けたことで、12の首都に関する知識は向上したのか?もちろんだ。何しろ、問題に答えるたびに、友人から答えを教えてもらったのだ。知識が向上して当然だ。