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コリア・ITが暮らしと経済をつくる国

韓国は今、本当に不景気なのか

モバイル決済急成長で「IT経済」は拡大路線へ

趙 章恩 [ITジャーナリスト]
【第3回】 2016年1月22日
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 モバイル決済急成長で
「○○Pay」誕生の嵐

 IT産業の中でも、その急成長が実際に誰の目にも見えるのが、モバイル端末による決済サービス市場だ。これが、FinTech市場の拡大を大きく後押ししている。そして、その象徴ともいえるのが、2015年8月に正式にサービスを開始した「Samsung Pay」(サムスンペイ)であり、韓国のモバイル決済市場を大きく変えたともいわれている。

spスマートフォンによるモバイル決済拡大が、韓国フィンテック市場の起爆剤に ※写真はイメージ ©Fotolia_100162609

 今までのモバイル決済は、日本でも使われているNFC(近距離無線ネットワーク)方式が主流であり、これだと店舗に専用読み取り機がないと決済ができないため、韓国ではなかなか普及が進まなかった。

 「Samsung Pay」は、従来の磁気カードの読み取りに使うMST(マグネチック決済方式)と、NFC方式の双方に対応できる機能を搭載したモバイル決済システムであり、これならば、従来のプラスチック・クレジットカード決済用の端末にスマートフォンを近づけるだけで決済が可能となる。

 そもそもクレジットカード社会である韓国だけに、ほぼすべての店舗で「Samsung Pay」が使えるというわけだ。本人のクレジットカードをスマートフォンに登録し、指紋認証をして決済する仕組みなので、セキュリティも担保されている。

 サムスン電子の最新ハイエンドスマートフォンがないと利用できない決済サービスであるにも関わらず、「Samsung Pay」を使った決済額は、サービス開始3カ月で2500億ウォン(2016年1月21日時点で約239億円)を突破した。

 韓国メディアによると、このようなモバイル決済での総支払額は、2015年7~9月の3カ月だけで6兆2250億ウォン(同約5942億円)を突破したという。

 前年同期が、約3兆9300億ウォン(同約3751億円)だったというから、いかに急成長しているかが分かるだろう。

 「Samsung Pay」の勢いに続けとばかり、「カカオペイ」「ペイコ」など、スマートフォン経由での決済サービスが今、韓国で続々登場している。LG電子も「LG Pay」のサービスを始める予定の他、デパートや大手ディスカウントストアも独自の「○○Pay」を準備している。

 2016年には、韓国で初となる無店舗インターネット専用銀行が登場する。インターネット専用銀行は、ソーシャルメディアのIDが口座番号の代わりになり、人に代わって人工知能がオペレーターとなって顧客の質問に対応したり、また、インターネット上のサービス利用履歴から顧客の信用度を分析し、貸出金額を決めたり金利を決めたりするそうだ。

 韓国では、こうした新しいITサービス産業と、その関連産業分野への投資熱が高まっていて、国もこれらの産業を中心とした新市場のプレーヤーに投資しやすい環境を整えようと、さまざまな政策を打ち出している。次回は、その実情について紹介してみたい。

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趙 章恩
[ITジャーナリスト]

ちょう・ちゃんうん/韓国ソウル生まれ。韓国梨花女子大学卒業。東京大学大学院学際情報学修士、東京大学大学院学際情報学府博士課程。KDDI総研特別研究員。NPOアジアITビジネス研究会顧問。韓日政府機関の委託調査(デジタルコンテンツ動向・電子政府動向・IT政策動向)、韓国IT視察コーディネートを行っている「J&J NETWORK」の共同代表。
IT情報専門家として、数々の講演やセミナー、フォーラムに講師として参加。日刊紙や雑誌の寄稿も多く、「日経ビジネス」「日経パソコン(日経BP)」「日経デジタルヘルス」「週刊エコノミスト」「ニューズウィーク」「リセマム」「日本デジタルコンテンツ白書」等に連載中。韓国・アジアのIT事情を、日本と比較しながら分かりやすく提供している。

コリア・ITが暮らしと経済をつくる国

韓国の国民生活に、ITがどれほど浸透しているか、知っている日本人は意外に少ない。ネット通販、ネットでの納税をはじめとする行政サービスの利用、公共交通機関のチケットレス化は、日本よりずいぶん歴史が古い。同時に韓国では、国民のIT活用に対する考え方が、根本的にポジティブなことや、政府が規制緩和に積極的で、IT産業を国家の一大産業にしようとする姿勢などが、IT化を後押ししていることも事実である。

一方の日本は、どうして国を挙げた大胆なIT化の推進に足並みがそろわないのか。国民生活にITが浸透している韓国の先行事例を見ながら、IT化のメリットとリスクを見極めていく。

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