リーダーの行動力は
「マメさ」から生まれる
トップリーダーの繊細さは、行動にも表れています。会食直後のお礼メールもその1つですが、繊細で配慮が行き届いているがゆえに、行動もマメになるのでしょう。
私はこれまで4度ほど、サウジアラビアを訪問しています。現地の人と交流するなかで実感したのは、サウジアラビアのアブドラ前国王が本当に国民に愛されているということでした。
アブドラ前国王は生前、1ヵ月かけてサウジ全土を回って国民と対話したり、国民から直接要望を聞く会を定期開催したりしていました。厳格なイスラム教が行き届いたサウジアラビアならば、おそらく国王がそこまでしなくても、国を治めることはできたと思います。しかしアブドラ前国王は、国民の生の声を聞くことを大切にしていました。
その背景には、国民への愛情だけでなく、インターネットの発展もあったのだと言われています。さまざまな価値観に基づく情報がサウジアラビア全土に入ってくる時代になった以上、自らの目で国民の生活を観察し、自らの声で国民に伝えていかなければならないとの思いが、国王ご自身にもあったのでしょう。
モロッコの国王も同様の取り組みをしています。国民と握手して回ったり、共に語り合ったりして、積極的に国民との距離を縮めているそうです。
君主制が敷かれている国家のリーダーですら、現場を行脚するようになっています。こうした現実を目の当たりにし、トップリーダーの繊細さと行動力を垣間見た思いでした。
この国王たちと同様、現場を歩くようにしている企業経営者は少なくありません。変化の激しいこれからの時代、現場に足を運ぶことはますます重要になります。
現場の空気感やメンバーたちの顔色の変化を繊細に察知することが、リーダーの意思決定力を補強していくのです。
(第18回へつづく・3月7日公開予定)