日本はいまエネルギー・資源の枯渇、環境問題、少子高齢化という大きな課題に直面している。こうした課題は、実は近い将来、世界が直面する課題でもある。

 中国、インドなどの新興国では経済成長の加速で、猛烈にエネルギー消費が増えている一方で、中国は2030年半ばに、インドも2050年以前に人口がピークアウトすると言われており、2050年までには、全世界は高齢化社会を迎えると考えられる。その意味で日本は、世界がいずれ直面する課題を先取りしており、私は日本を「課題先進国」と呼んでいる。

小宮山 宏(こみやま ひろし)
1972年東京大学大学院工学系研究科博士課程修了後、東京大学工学部長 等を経て、2005年4月に28代総長に就任。2009年3月に総長退任後、同年 4月に三菱総合研究所理事長、東京大学総長顧問に就任。『地球持続の技術』『「課題先進国」日本』『知識の構造化』など著者多数。

 日本は自らの課題解決にトライする「課題解決先進国」を目指すことによって、世界に貢献すると同時に、新たな成長機会を創造することができる。政府は6月に新成長戦略をまとめた。個々の政策については、見るべきものがあるものの、やはり総花的でその目指すべき姿が明確でない。日本と世界が直面する課題を解決するには、ある程度長期を展望したビッグピクチャーを提示すること、その際に、経済的な利害得失ばかりでなく、科学的な知見に基づいて、目標を設定することが重要である。

 ここでは私が提唱している「ビジョン2050」と、それを追求することが、後述する「創造的需要」を生み出すチャンスであるということについて述べてみたい。