2016年春闘の賃上げ率が
日本の行く末を左右する

 中長期的な展望に立ったとき、アベノミクスの成否、ひいては日本の行く末を大きく左右するという点で、2016年の春闘賃上げ率は極めて重要である。

 昨年秋、アベノミクスが第2ステージに移行したのは、拡張的な金融・財政政策による景気浮揚を主眼とした第1ステージの限界が、露呈してきたからであった。2013年度こそ景気が予想外の回復傾向を示したが、これは円安・株高でマインドが好転し、それまでの先送り・抑制されていた需要が顕在化した面が大きかった。2014年度入り後は景気の停滞感が漂うが、それは消費増税の影響が長引いているからではなく、そもそも潜在成長率が低下していたことが明らかになってきたためである。

 その意味で、より成長戦略に焦点を当てた「強い経済」、人口減少への歯止めを意識した「子育て支援」、さらには国民生活の安心の基礎である「社会保障」を、新たな3つの柱とする第2ステージに移行したことは適切な判断であったといえる。

 そして、このアベノミクスの新3本の矢の鍵を握るのは、賃金が持続的な上昇トレンドに乗るか否かである。外需主導成長が限界に突き当たるなか、内需主導成長の柱となる個人消費の拡大は賃金増加無しには達成できない。また、子育て支援、社会保障に必要な財源の主な原資も賃金に求めざるを得ないからである。

 90年代末以降、ベア・ゼロが常態化し、主要企業の春闘賃上げ率(定昇+ベア)は1%台が定着していた。これが「官製春闘」によってベアが復活し、2年連続で賃上げ率2%台を回復しており、望ましい流れが生まれつつある。この文脈では、賃上げで経済好循環を進める流れを継続させる最低ラインとして、主要企業の2016年春闘賃上げ率は、小幅でもベアの継続を象徴する2%は確保する必要があろう。

 さらに、内需主導の経済好循環の形成の観点からすれば、本来的には、賃上げ率は小幅でも前年を上回る結果が望ましい。加えて、中小企業従業員や非正規労働者にも賃上げの動きが昨年以上に広がることが望まれる。

 とはいえ、先行き不透明感が極めて強い状況下、とりわけベースアップを決断するのは容易なことではない。それは経営サイドのみの発想ではなく、労働サイドにも、企業体力が落ちれば将来的にかえって雇用が失われるリスクを勘案して慎重になる傾向もあろう。

 しかし、そうした発想のみが強まれば縮小均衡をもたらす結果になりかねない。それは、2000年代半ばの局面からの教訓でもある。