家業を継ぐこと、父への複雑な思いは
ファミリービジネスに共通の難しさ

桜井 今日は本当に勉強になりました。異業種ですが、家業を継いで、いったん父に相反して追い出されて…という境遇も似ているなと星野社長には共感するところも多く、ますます頑張って頂きたいです。

星野 え、桜井社長は何代目ですか。一度、家業から出られた?

桜井 世に言う危ない三代目です(笑)。父とソリが合わずクビになったんですよ。

星野 へぇ、私とまったく同じだ(笑)。私の場合は同族会社の公私混同の弊害が嫌だったんですが。自分と同じような完全衝突型のハードランディング・パターンの方に会ったのは初めてです。でも、ハードランディングは変革が早く進むメリットがあると思っているんです。先代と折半したような中途半端な戦略で進みませんから。親子はどこかで和解もしますし、結構理想的なかたちかなと(笑)。ハードランディング・パターンを避けようとしている人が多すぎるのではないかと思っているところです。

桜井 確かに私も完全なハードランディングですね(笑)。父が亡くなった後に戻って継ぎましたから、孤独な面もありましたけど自由に変えられたのは良かったですよね。もちろん試行錯誤でしたけど、父が存命だったらできなかったことも多かったと思います。だから、罰当たりな言い方ですけど、父があと4年長生きしていたら、この会社はなかっただろうなと。親不孝ですが。

星野 代々仕事を継いでいくってそういうものですよね。父を父として見ているのではなくて、やっぱり乗り越えなきゃ行けない存在として見ていますから。そういう気持ちになられるというのも私はよく分かります。

桜井 次は息子さんが継がれるのですか。

星野 まだ若いですから分かりませんし、同族会社のままいくかいかないかも別として、社員数が二千数百人と個人の能力でどうこうできる規模ではなくなってきていますから、マネジメント体制をさらに整えていきます。私自身、そんなに仕事は好きではないですし(笑)。

桜井 みんな好きじゃないです(笑)。今日は本当にありがとうございました。

星野 こちらこそありがとうございました。今度、酒蔵に遊びに行かせて下さい。

桜井 ぜひ!いらしてください。

表面的にお客様に合わせた魅力は長続きしない<br />自分たちのこだわりを評価してくれるお客様を探す“ハードランディング型”事業承継で意気投合した星野代表(右)と桜井社長