マニュアルにビジョンを吹き込む
ここに至るまでの1つのきっかけが、マニュアルの見直しでした。
過去から受け継いできた安全文化をマニュアル化し、それを徹底して伝えてきたものの、あまりにもマニュアルどおりの行動をとることに重きが置かれた結果、現場で臨機応変に対応できない従業員が出てきてしまったといいます。
マニュアルをつくる以前からいた従業員は、それぞれの作業の意味も含めて先輩から学ぶ機会がありました。しかし、マニュアルを中心に学んだ世代になると、それぞれの作業の背景、つまり「なぜその作業をするのか」が見えなくなってしまっていたのです。
そこでJR東海ではマニュアルをつくり変え、作業手順とともに「なぜそのような作業が必要なのか」の解説も記載するようにしました。
これによって、それぞれのアクションの意味を理解できた社員たちは、マニュアルに書かれている前提条件が当てはまらない事態が起きた際にも、柔軟に対応できるようになっていったそうです。
ビジョン型の組織に切り替えるからといって、すでにあるマニュアルそのものを廃止する必要はありません。マニュアルに書かれた作業のなかに、その作業の意味やビジョンとのつながりをわかりやすく明記しておくことで、メンバーにますますビジョンが浸透し、機動力に溢れる現場をつくることができるのです。