クラウドファンディングで
復興支援金400万円を調達

「高校生だからここまで」なんて限界は<br />つくらない<br />石川拓治(いしかわ・たくじ)
早稲田大学法学部卒業。ノンフィクションライター。1988年からフリー。1961年茨城県水戸市生まれ。著書に『奇跡のリンゴ』『37日間漂流船長』『土の学校』(幻冬舎文庫)、『三つ星レストランの作り方』『国会議員村長』『新宿ベル・エポック』(小学館)、『ぼくたちはどこから来たの?』(マガジンハウス)、『HYの宝物』(朝日新聞出版社)などがある。近著は『茶色のシマウマ、世界を変える』(ダイヤモンド社)。

石川 他にも生徒さんたちの成長がうかがえるエピソードはありますか?

小林 去年の2015年4月に「ネパール地震」が発生しましたよね。数千人の方が亡くなるという大惨事となったわけですが、本校にもネパール出身の生徒が3名ほどいました。彼らが母国のために何かしたいと申し出てくれたんです。

石川 それは、募金活動をしたいという話?

小林 そうそう。現地の人の話によると、どうやら援助が首都カトマンズで止まっているそうで。生徒たちのうち2人は僻地の出身で、カトマンズより壊滅的な被害を受けているにもかかわらず物資もお金も届いていないことがわかったんです。

石川 なるほど。

小林 実情を知り、生徒たちが勇気を持って立ち上がったわけですが、肝心の援助資金の目標金額が10万円単位だったんです。

石川 数十万円ですか。

小林 そう。それを聞いて、「母国の危機なのに、それだけ? 夢がちっちゃいんじゃないの!」って言っちゃったらしいんですよね、私。すると、彼らなりに「本当に必要なものは何か」に立ち戻って考え抜いた結果、英語のクラウドファンディングを使って世界から約400万円の支援金を集めて来たんです。

石川 3人で400万円? それは大したもんだ。

小林 それをメンバーのお兄さんを経由してネパールの団体に寄付し、さらに自分たちの村に行って崩壊した学校をレンガで建て直したり、医療品をメディカルセンターに届けたりするボランティア活動をしました。それが、被災地の自立とサステイナブルな支援を目指して資金を集め、クリニックと学校建設に貢献したとして、ネパールの前大統領ラムバラン・ヤーダブ氏に表彰されたんです。

石川 その子たちは、何年生で、なんていう子?

小林 1期生で現在2年生。ヒマンシュと、カルマと、サンギータの3人です。その3人に賛同した日本人のユウイチロウ、タジキスタン人のディル、フィリピン人のパオロ、インド人のヤシュウィーニも、昨年9月からプロジェクトに加わっています。素晴らしい実績ですので、私からも「よくやった!」と彼らに声をかけたんですけど、「夢がちっちゃいってりんさんにハッパかけられたから頑張れたんだよ」って返されました……私はそんなことを言ったことすら覚えていなかったんですが(笑)。

石川 ははは!

小林 何が言いたいかというと、数十万円という金額は彼らの年齢からしたら大金かもしれません。けれど、「高校生だから僕はここまでしか出来ない」という限界を決めつけてはダメ。現場のニーズが何なのかを探れば、本当に必要とされているスケール感がわかるはずです。彼らは自分たちで「数百万円単位が必要」と気付き、目標達成のための策を練り、400万円の支援金を調達したのです。

石川 それらのボランティア活動は、学業と両立させながらやっていたの?

小林 ISAKでは、秋と翌年の春に1週間ずつ、「プロジェクトウイーク」という期間を設けています。その期間は授業をせず、自分が関心のあるものであれば何でもゼロからやっていいことにしているんです。ネパールの支援活動もプロジェクトウイーク中に集中的にリサーチや長期的な戦略立案などを行ない、実際の活動は夏休みや冬休みに現地に入ってやっていたようです。