デフレ脱却には金融政策と経済成長のバランスが重要

 デフレ脱却には、金融政策と経済成長のバランスが重要である。しかし、成長戦略がうまくいかず、日本経済にこれ以上の成長源泉が乏しいとすると、バブルの危険性だけが高まりかねない。こうしたリスクが考慮すると、財政の持続可能性を無視してまで、大胆な金融政策を続けるのは早晩難しくなる。

 また、非伝統的で大胆な金融緩和が当面成功したとしても、やがては普通の金融政策に戻る出口戦略が必要になる。アメリカの中央銀行(連邦準備制度理事会)は2015年12月に、リーマンショックのあと7年間にわたって続けてきたゼロ金利政策を解除して、利上げを始めることを決めた。アメリカの金融政策は危機対応を終え、金利の上げ下げで景気を調節する正常な姿に戻る。中国経済が減速するなど世界経済の不透明感が強まる局面ではあるが、出口戦略のメリットを重視した結果である。

 これに対して、日本では、異次元金融緩和の規模も期間もアメリカ以上であり、出口を模索すると、その副作用も大きい。デフレ経済が続いて、インフレ率が思うように上昇しないと、利上げは民間経済活動に悪影響を与えるだろうし、公債の利払い費もかさむ。入口で大幅な金融出動を実施すればするほど、出口での引き締めがやりにくくなるし、実物経済、ひいては財政の持続可能性に与える悪影響もより大きくなる。

 特に財政再建が進展せず、財政の持続可能性が不透明なままで金融政策で出口戦略をとろうとして日銀が国債買い入れ額を縮小し始めると、国債の引き受け手がいなくなる。高齢化が進展すると民間の貯蓄余力も低下するから、国内での国債消化は期待しにくい。海外の投資家に国債をもってもらうには,償還への確実なシナリオが必要になる。財政再建が見通せないと、国債価格の暴落や財政破綻が顕在化する。

 異次元の金融緩和政策は当面の景気対策としては有効だろうし、国債の買い支えで財政破綻の顕在化を先送りすることもできるだろうが、いつまでも続けることができない政策でもある。中長期の課題である財政再建や経済成長の活性化について、金融政策に過大な役割を負わせるのは危ない。