政治家としての「末期」

 菅直人首相が冴えない。一国を代表する「顔」でもあるので、容姿のことまで言わせて貰うが、首相就任以来表情に力が無く、安倍晋三元首相の末期の頃の印象とよく似ている。心身、特に心の健康に問題はないのだろうかと心配になるほどだ。

 菅氏は、政権交代の総仕上げともいうべき参議院選挙を自らの失敗で大敗したのだから、党代表として引責辞任しても全くおかしくない。今後の政権運営への影響を考えると、今回の参院選の一敗は、昨年総選挙の一勝を8割方フイにするくらい大きな一敗だった。代表選挙を前倒しして、お辞めになったらいいのではないだろうか。

 推測するに、菅氏の心の支えは、「首相交代は必要ない」が多数を占める世論調査の結果だろう。確かに、国民は、ここ数年来の短期間に首相が交代する状況に批判的であり、首相交代に飽きている。しかし、同時に内閣支持率も下がり続けており、二つの調査結果を「首相交代は必要ないが、内閣は支持していない」とつなげて読むと、「もう政治に期待していない」という政治への無関心を読み取ることができる。政治の側から見てこれは由々しき事態であり、首相交代自体への批判はあるとしても、菅氏は身を引いて、政治への関心を喚起できるような新政権を早急に立ち上げるべきではないか。

 『読売新聞』(8月3日、朝刊)によると、首相は最近、知人に「消費税の話は、財務省に『選挙の前は言わない方がいい』と止められたが、それでも新しい政治をしたかったので話した」のだという。

 政策に関して財務省に振り付けされている様子が窺えるが、菅氏は、飼い主を喜ばせようとする忠犬よろしく、消費税を口に出してしまったのだろう。直近の世論調査で消費税導入に対して賛成意見の方が反対意見よりも多いことなどを吹き込まれていたのだろうと推測するが、参院選前に消費税問題を口にしておいて選挙に勝てば、消費税について国政選挙で民意を得たことに出来るという「功名心」を抱いていたのではなかろうか。しかし、結果は裏目に出て、現在、事態のあまりの拙さに半ば狼狽している。