あまりにも多すぎる
「生活保護だから」「生活保護なのに」

 そもそも「生活保護のくせにゼイタク」「生活保護なのに不相応」というタイプの主張を、日本において、閣僚や行政のトップが戒めた事実はあっただろうか? 率先して語ったという事例なら、数えきれない。たとえば2011年12月12日に開催された、第2回「生活保護制度に関する国と地方の協議」においては、高知市長の岡崎誠也氏が、2008年の「リーマンショック」後に増加した「スマートフォンをつつきながら生活保護を受けている」若年の生活保護利用者たちが、医療機関の職員たちに「なぜこういう人が生活保護なのか」という疑問を持たれていることを語っている。

 もと電機メーカーの「中の人」であった自分の立場から一言突っ込むと、ハードやアプリを提供する企業に対する開発・生産コスト、ひいては消費者に対するコストを下げる役割を果たしているのがスマートフォンだ。もしも生活保護利用者のために、いわゆる「ガラケー」の開発体制や生産ラインを維持したら、かえって高くつくことになりかねない。しかし「ガラケーの方が高くつく」と説明しても、相手は納得しない。そういう時、私は

「『生活保護ならガラケーは許す、スマホはダメ』と言いたい人は、日本の通信機器業界に、『生活保護専用ガラケー』という貧困ビジネスでも提供したいのかな?」

 と思ってしまう。

 ケースワークの現場にいる石原氏からは、どのように見えているだろうか?

「世の中の方々が『生活保護だったら、認めない』『生活保護なら、してはいけない』と福祉事務所に言ってきたり、生活保護で暮らしているご本人に言ったりする事例ですよね……これはもう、たくさんありすぎで、なんとも(笑)」

 たとえば?

「パソコンを買ったとか、旅行に行ったとか、ブランドもののバッグを買ったとか、大きな液晶TVを買ったとか、ペットを飼っているとか。もちろんパチンコなどのギャンブル行為、飲酒や喫煙など『健康に良い』とはいえない生活習慣もあります。それから、本人の負担なしで医療機関に通えることも、悪事扱いされることがあります」(石原氏)

 本人の負担なしで医療が受けられるのは、「健康で文化的な最低限度」として定められている生活保護費から医療費を持ちだしたら「最低限度以下」になるからだ。もしも、中~低所得層の人が医療費を自費負担した結果として、一ヶ月に使えるお金が生活保護基準以下になり、しかも資産がないのであれば、医療費のみ生活保護を利用することができる(医療扶助単給)。この問題は、健康保険の「高額療養費」制度が創設されるきっかけともなった(参考:本連載過去記事)。生活保護制度の側から、生活保護を利用していない低所得層を排除したり差別したりしているわけではない。