その意味では、ファイナンスの世界では「100年」も「1000年」も「永遠」もほぼ同じく「遠い未来」と考えていい。つまり、金利のある世界では、キャッシュフローの継続期間よりも金利の絶対水準が大きな影響を与えるのである。「金利の見極めが価値評価を決める」と言ってもいいのだ。
世の中の多くの金融商品は、金利(割引率)という重大なポイントを(おそらくは意図的に)無視し、キャッシュフローの総額(額面)だけに注目させることでその魅力を打ち出している。
ファイナンスの知恵があれば簡単に見破れるトリックである。
なぜ大学時代の友人に
100万円貸せないのか?
金利(割引率)がどのように決まるのかを理解するためには、そもそも金利とは何なのかをしっかりと把握するのがいちばんだ。身の回りを見わたせば、さまざまな金利を目にすることができる。いちばん身近にある金利は銀行の預金金利だろう。大手銀行はほぼ同様の金利を提示しており、現時点では平均0.025%とほぼゼロに近い。
バブルの時代を知らない人たちにとっては、この低金利は常態である。定期預金の金利が7%くらいあって、「100万円を預けておけば10年で200万円になる」という時代を知らない人からすれば、金利0.025%と聞いても何の驚きも落胆もないだろう。
30代以下の世代の中には、いろいろな情報を収集して少しでも金利の高い銀行を探し、「やった! 0.2%の定期に預けられたぞ!!」と喜んでいる人もいるだろう。若い世代からこんな言葉を聞いて愕然としたことがある。
「お金を置いてるだけなのに利息までつけてくれるなんて、銀行ってすごいですね」
低金利は国の経済状態によるところもあるので仕方ないにしろ、この発言の主には、金利に関する基本的な理解がごっそり抜け落ちている。
金利とは、あえて丁寧な言い方をすれば、「一定の期間にわたって現金(キャッシュ)を手放すことで生まれるデメリットに対する見返り」である。これだけだと少々わかりづらいと思うので、例を使いながら説明しよう。
いまここに1年かけて貯めた現金100万円があるとしよう。あなたはそのお金で軽自動車を買おうとしている。そこに、10年以上も会っていない大学時代の友人Oくんが突然やってきてこう言う。
「すまない。1年後には絶対に返す。
だから、何も聞かないで100万円貸してくれ」