その結果、2009年にはマイナス4.3%まで落ち込んでいた実質GDP成長率(対前年比)が、14年に2.6%まで回復した。12年1月には、8.4%だった失業率も6.5%まで下がった。そして、財政健全化自体は遅れ気味だったが、徐々に改善傾向となり、2018年度に財政黒字化が実現すると予測されるようになった。

 この連載で紹介してきたように、2015年5月の総選挙が近づくにつれて、キャメロン政権の経済財政政策は国民から高評価を得るようになり、長期間労働党の後塵を拝し続けてきた保守党の支持率は急回復し、総選挙当日に保守党は遂に大逆転した。保守党は28議席増で単独過半数(下院定数650)越えの331議席を獲得した勝利したのである。

 要するに、キャメロン首相が「財政政策、金融政策、構造改革のバランス」という時、それは、緊縮財政による財政規律の維持、大胆な金融緩和の断行、海外企業や投資の積極的な呼び込みなど民間活力を引き出す構造改革のバランス、という意味になる。そして重要なことは、財政・金融政策と構造改革を同時にスタートさせて、5年間かけて成果を出したということである(第130回)。

「アベノミクス3本の矢」を振り返る

 一方、安倍政権が「財政政策、金融政策、構造改革のバランス」という時は、どういう意味になるのだろうか。まずは、安倍政権の経済政策「アベノミクス」を振り返ってみたい。

 アベノミクス3本の矢の1本目・金融政策では、黒田東彦日銀総裁が、円高・デフレ脱却に向けて2%の物価上昇率を目標とし、資金の供給量を2年で2倍に拡大する「異次元の金融政策」を断行した。これは金利を下げることで為替を円安に誘導し、輸出企業の業績改善を狙うものだった(第58回)。

 第二の矢・公共事業については、2013年1月、12年度補正予算に盛り込む事業規模20兆円の緊急経済対策を発表し、民主党政権で減らされてきた公共事業の大幅な増額を柱に据えた。2012年度当初予算の公共事業関係費とほぼ同額の、巨額な財政出動であった(第51回)。首相は「実質GDPを2%押し上げ、約60万人の雇用を創出する」と宣言した。

 2013年度には、予算規模は過去最大規模の100兆円を超え、国債発行額は、民主党政権時に財政ルールとして定められていた44兆円を大きく上回る49.5兆円に達した。しかし、「アベノミクス」は国民に好感され、安倍内閣の支持率は60%を超えた(第58回・P2)。