今回は少し趣きをかえて、2006年に執筆した学部・大学院の授業や企業研修で過去に50回以上使用しているケース教材「工場長の苦悩」を読者の皆さんに読んでもらい、2週間後に設問に対するわたしなりの回答と、日本企業を再び品質立国とするための処方箋を示したいと思う。それまでに、個人で、また、職場の同僚と一緒にこのケースに取り組んでほしい。
トヨタのリコール問題は、アメリカ公聴会への豊田章男社長の出席の前後で大きなニュースとして取り上げられたが、その後も、他車種での問題が生じている。品質に関して万全であったトヨタにおいて、品質問題が生じているということは、実はトヨタ1社の問題ではない。
日本企業のほとんどが、トヨタで採用されている方法とほぼ同様の品質管理を行っているからである。極言すれば、現状のままの品質管理を行っている限り、日本企業では引き続き深刻な品質問題が発生し続けるだろう。いま行われているような対処療法をいくら繰り返しても本質的な問題解決とはならない。
それでは、設問を先に示し、その後に、ケースを示すことにしたい。
設問
(1)ゼロディフェクト(全品良品)のための品質作り込み活動は、今後とも継続すべきか、それとも、全品良品ではなく、コストも同時に考慮して、一定割合の欠陥品の発生を許容したほうがよいか。
(2)QCサークル活動や提案制度は。これまでどおり継続すべきか、それとも、新たな方策を模索すべきか。
(3)外国人労働者にも、日本人労働者と同様の品質管理教育を行う方がよいか、それとも、単純作業従事者として作業に専念してもらった方がよいか。
(4)多品種少量生産品の製造が品質問題の原因の一つだと言われているが、現状と同様にそれらの製造を続けるか、それとも、方針を変更した方がよいか。
(5)あなたが、田中工場長だとすれば、どのような方策を講じるか。工場長として一般的な責任と権限を前提として、アクションプランを作成すること。