「1+1=2」に納得できない子どもが
なぜ、世界の舞台で活躍できたのか

 竹中平蔵教授が「『親の教科書』といえる稀有な良書」と評し、『「学力」の経済学』著者、中室牧子氏が「どうやって子どもをやる気にさせるのか、その明快な答えがここにある」と絶賛。また、高濱正伸氏(花まる学習会代表)が「リーダーシップ育成の教科書として、目下最良の一冊」と称する『一流の育て方 ビジネスでも勉強でもズバ抜けて活躍できる子を育てる』

 ベストセラー『世界中のエリートの働き方を1冊にまとめてみた』著者“グローバルエリート”ムーギー・キム氏と、子育て連載でバズ記事連発のミセス・パンプキン氏が、200人を超えるエリート家庭の「最も感謝している教育方針」を調査し、本質的なリーダーシップ育成法を一冊にまとめている。
 発売わずか2ヵ月で13万部を突破し、子育てのみならず、ビジネスやあらゆる分野のリーダーシップを伸ばすビジネス書として、異例のベストセラーとなっている中、本書の内容に基づき、各界のリーダーと「リーダーシップの育て方」を論じる対談編をお送りしている。

 今回は、予防医学研究者で医学博士の石川善樹氏をゲストに、「一流の教育」や専門の「グリット(やり抜く力)」について詳しくうかがう。東大医学部を経てハーバード大学院卒、ダイエットの理論をはじめさまざまなユニークな研究で注目される石川さんだが、子どものころは「1+1=2」に納得できなかったという。いったい石川さんは、どのようにして育ち、いま、教育についてどのように考えているのだろう?

「勉強する理由がわからない」まま中学受験をし、すべて不合格に

ムーギー『一流の育て方』は、日本を代表するリーダーシップあふれるエリート学生たちに対して行った「最も親に感謝している家庭教育方針に関する調査」に基づいており、これが大変好評でした。この調査と同じ質問を石川さんにもお尋ねしたいのですが、まず石川さんご自身は、どのように育てられたのかお聞かせ願えますか。

石川 ぼく自身がどう育てられたか、ですか。じつは、子どものころ、ぼくは物事を理解したりするのがかなり遅いほうだったんですよね。

ムーギー またまた、そんな。

石川善樹(いしかわ・よしき)
予防医学研究者、(株)Campus for H共同創業者
1981年、広島県生まれ。東京大学医学部健康科学科卒業、ハーバード大学公衆衛生大学院修了後、自治医科大学で博士(医学)取得。 「人がより良く生きるとは何か」をテーマとした学際的研究に従事。 専門分野は、予防医学、行動科学、計算創造学、マーケティング、データ解析等。 講演や、雑誌、テレビへの出演も多数。NHK「NEWS WEB」第3期ネットナビゲーター。 著書に『疲れない脳をつくる生活習慣』(プレジデント社)、『最後のダイエット』『友だちの数で寿命はきまる』(ともにマガジンハウス社)、『健康学習のすすめ』(日本ヘルスサイエンスセンター)がある。

石川 いえ、本当に。たとえば「1+1=2」って小学校で習いますが、ぼくはそもそも「足すって何なんだろう?」というところで立ち止まってしまうんです。じゃあ、「算数+国語」ということもできるのかな、それなら答えはどうなるんだろう? みたいに考えてしまったり。「足す」という概念を本質からちゃんと習うのは大学に入ってからです。でも、小学校では足し算が出てきたと思ったら、そのあと、すぐに引き算に入りますよね?

ムーギー 「足す」がわからないのに、もう「引く」のかよ、と。

石川 そうなんです。いろんなことがわからないまま、どんどん進んでいってしまう。

ムーギー ふつう、ほとんどの人は、「1+1=2なんだ」って言われると、言われた通りそのまま受け入れますよね。でも、石川さんは原理原則の部分を納得しないと受け入れられない。いろんなことについて、「そもそもこれはどういうことだ?」と、本質的に考えてしまうわけですね。

石川 だから、いつも母親に山ほど質問している子どもでした。たとえば、「なぜぼくは何もしていないのに1日3食たべてもいいの?」とか。

ムーギー 私はむしろ、「なぜ3食しかないんだ!」と騒いでいましたよ(笑)。

石川 お小遣いやクリスマス・プレゼントも、もらう理由がよくわからないので、「いらない」と断っていました。だから、母親とは話が合いませんでしたね(笑)。

ムーギー それも私と反対です。私は節分でも敬老の日でも、プレゼントをほしがってました(笑)。

石川 母親はふつうに、いい学校に入っていい会社に入らないと、いい人生を送ることができないよって考えているようなところがありました。それで、小学校4年生のときには、中学受験に向けた勉強をさせられたんですよ。こっちは、「いい人生って何だろう?」というところでつまずいてしまうのに。

 結局、「本当にこういう勉強をしたほうがいいのかな」という疑問を抱えたまま勉強をしていたので、身も入らず、一つも合格しませんでした。

 でも、ぼくは、受験が終わったからこれでようやくファミコンができる!と思って、不合格の発表を見に行った日の帰り道で、「ファミコンやっていいよね?」と聞いたら、母親にキレられました(笑)。

ムーギー 一つも受かっていないのに、喜んでファミコンをはじめるなんて、何言ってるんだ!と。