市場では「一物一価格の法則」が成立し、同じ物は同じ価格で取引される。というのは、空間(時間)的な価格差は、安い所で(時に)買って高い所で(時に)売るという裁定取引(投機)によって解消されるからである。
しかしながら現実には、同じ物が異なる価格で取引されている。その理由にはさまざまなものがあるが、今回は「第3級の価格差別」について考えてみよう。ここで価格差別とは、買い手をいくつかのグループに分け、各々のグループに異なる価格を設定することによって利益を増やす方策である。
映画館の入場料にはなぜ
シニア割引や学生割引があるか
実際、映画館の入場料には「シニア割引」や「学生割引」があり、一定の年齢以上の人や学生は安く映画を鑑賞することができる。これらは、長い間働いてきた老人や、若い学生たちへのサービスだろうか? そのような優しい企業は大歓迎ではあるが、資本主義経済では生き残れないだろう。それでは、なぜ値引きが行われるのか? 当然のことではあるが、映画館が利益を最大にするためである。
いま、買い手にはいくつかのグループがあり、グループの間で価格に対する反応が異なるとすれば、すべてのグループに同じ価格を設定するのは必ずしも得策ではない。このような価格に対する反応は、需要の価格弾力性(価格が1%上昇すると需要が何%減少するかを表す)で測られる。お小遣い(可処分所得)がそれほど多くはない学生(老人)は、映画館の入場料が高くなれば、映画を見に行く回数を大きく減らすだろう(その意味で、需要は弾力的である)。その結果、彼らからの入場料収入が減少するのである。
逆に、一般の人々の需要は学生や老人と比べて非弾力であり、価格が多少高くなっても映画を見に行く回数はそれほど減らない。したがって、入場料収入を増やすために、入場料は老人や学生と比べて高く設定されるのである。