虐待や産後うつなど、育児を巡るニュースが取り沙汰されるなか、「3人に1人のママは、『虐待をしたことがある』と感じている」という衝撃的なアンケート結果が発表された。

 この結果は、0歳から6歳の子どもを持つママのためのコミュニティ・サイト、リトル・ママ(本社:福岡県福岡市)が同サイトの会員1103人を対象に行った「子どもの虐待に関するアンケート」によるもの。

子どもに暴力行為をした母親
「1人育児に疲れて……」

 アンケートによると、「虐待をしたと感じたことがある」と答えた母親は全体の33.7%。暴力行為などを行ったことがあるかを複数回答で聞いたところ、「加減をして叩いた」ことがある母親は771人、「子どもが傷つくような言葉、存在を否定するような言葉を言った」が403人、「加減をせずに感情にまかせて叩いた」が250人などの結果となった。どの行為もしていないと答えた母親は1103人中、わずか174人だった。

 もちろん、多くの母親が良かれと思ってこういった行為を行っているわけではない。フリーワード回答で寄せられた言葉の中には、苦悩する母親たちの姿が垣間見える。

「8ヵ月の子どもが泣いているのを無視して家事していた。こうやってネグレクトにつながるのかと思いました。1人育児に疲れてイライラして逃れたい気持ちは、たぶんみんなあると思います」

「1人で家にこもり、感情をおさえられなくなっていた。その場にあたる相手が子どもしかいなかった」

「言葉だけでも子どもは理解してくれたのかもしれない。ただその時は私1人で子どもとの中に入って止めてくれる人がいなかった。私は心の中で『誰か助けて!止めて!』って叫んでいた記憶がある」

 同社の統括マネージャー宗像陽子さんはアンケートの結果を見て、「日常的に虐待を繰り返している例が多いわけではないが、多くの母親が感情にまかせて手を出し、『これが続けば虐待になってしまう』と虐待の入口にたたずんで呆然としている様子がうかがえた」とまとめている。

「仕事忙しそう」「体のことは……」
夫より「ママ友」に相談する理由とは

 育児に悩んだとき、母親たちは誰に相談しているのか。アンケート(複数回答)では、「夫」(779人)をわずかに抑えて「友人」(787人)が1位に。「父母、義父母」(706人)、「兄弟姉妹」(328人)が続いた。

 首都圏に住む母親たちに話を聞いた。3歳の女の子を育てる専業主婦は、「育児について夫とも話すが、仕事で忙しそうにしていることも多く、細かい話はママ友にすることの方が多い」と話す。

 1歳7ヵ月の男の子を持つ別の母親は、「産後の体調については、ママ同士の方がわかってもらえるのでママ友に話す」という。出産前後の定期健診時や、保育園での交流を通してできる「ママ友」が助けになるという母親は多い。

「子育てでイライラすることは誰にでもあると思うので、ママ友同士で愚痴を話すことも必要だと思う。いつも『子育てって本当に楽しい』としか言わないママを見ると、逆に心配になる」(2歳の女の子を持つ母親)。

 その一方で、なかには「ママ友」を作るのが苦手だという母親もいる。「気軽に声をかけられない性格なので、ママ友は少ない」と話す4歳と2歳の男の子の母親は、夫や父母に相談するほか、区の子育て電話相談窓口を利用することもあるという。リトル・ママでは、さまざまな事情を抱えた母親のいることを見越し、「なかなか外に出づらいママのために」とネット上の掲示板を利用することも勧めている。

 また、保育園に5歳の長女を預ける母親からは「『育児は母親がして当たり前』という考えが、育児を辛いものにしている」という声もあった。

「例えば平日休みの仕事をしている父母が保育園に子どもを預けた場合、母親が休みの日は『子どもも保育園を休ませる』という暗黙の了解があるのに、父親が休みのときは『(保育園に)連れてきてもいい』という雰囲気。同じように仕事をしているのに、この差はなぜなのだろうと思うことがある」

 話を聞いたなかで、2歳の男の子を育てる母親の、こんな言葉が印象に残った。

「子どもを産めば誰でもすぐに『いい母親』になれるわけではない。悩みながらの子育てで当たり前」

 育児は母親1人が背負うものではなく、周囲に見守られながら行うものであるはず。母親のためにも子どものためにも、母親を孤立させない育児環境を整えることが求められている。

(プレスラボ 小川たまか)