──為政者に働きかける団体というと、自分たちへの利益誘導が主目的だと思われますが、必ずしも誰かの懐を肥やすことが目的ではないというのも、一般の人のイメージと違います。

 本書でも詳しく書いていますが、日本会議を実際に運営しているのは、「日本青年協議会」という右翼団体で、そもそもは70年安保の時代に活躍した「生長の家学生会全国総連合」の闘士たちが源流です。ただし現在は、宗教団体である「生長の家」は日本会議とは一切の人的交流はありません。一方で、神道系、仏教系、その他新興宗教の各種宗教団体の関係者が、日本会議の役員の3分の1以上を占め、極めて宗教色の強い団体となっています。

 そのため、「宗教的な情熱が彼らのエネルギーやモチベーションになっている」と分析する人が多いのですが、僕は彼らをつないでいる横糸は、単に「左翼が嫌い」というメンタリティだと考えています。その意味では昔からいる愛国おじさんたちの「床屋清談」となんら変わらない。決して「自分の宗教の信者を増やしたい」であるとか「お布施が欲しい」なんかではない。

 右翼といえば、戦闘服を着て、軍歌を流しながら街宣車に乗っている姿を想像しがちですが、本当の右翼は背広を着てデモをして署名集めをしているんですよ。で、政権を動かすフィクサーといえば葉山の別荘とかゴルフ場で首相と密談をしているようなイメージを抱きがちですが、日本会議のメンバーはゴルフどころか、土日はデモや署名集めをやっているんです。そういう意味では、日本会議は、これまで我々が抱きがちな「政権に影響力を与える取り巻き」というイメージをことごとく覆す存在だということです。

左翼の手法を学び、真似る

──デモや署名活動といえば、逆に左翼の手法です。一般的な右翼のイメージとはまるで違いますね。

 まさに、そういう「イメージとの乖離」を書きたかったわけです。

「68年の反乱」という言葉で表現されるあの学生運動の嵐は、フランス、アメリカ、イギリス、そして日本と、世界中で同時多発的に起こりました。あの時、世界中で学生たちが声を上げた。しかし彼らはことごとくあのタイミングで負けます。ですが、例えばヨーロッパのリベラル勢力は、その後も「一歩後退二歩前進」を運動の中で繰り返しながら、冷戦崩壊後の90年代、2000年代になって各国の政権を担うまでに至りました。アメリカでさえそういう側面がある。

 これまで「日本ではそういう動きは起こらなかった」というのが通説でしたが、実際は違っていて、日本でも、学生運動の嵐を経験した人々は、「一歩後退二歩前進」を繰り返しながら、今や政権に大きな影響を与えるようになった。それが日本会議なわけです。そういう意味では、日本でも世界標準の出来事が起こっている。ただし、日本だけはそうした人々がリベラル陣営ではなく、保守陣営だったということです。