今回は「キャッシュフロー計算書」という看板を掲げた「連載40回記念キモ試し大会」へのご招待である。本コラムの後半では、大仕掛けの図表を4つ用意した。使いようによっては「粉飾決算」を暴く黒魔術への転用も可能なので、その取り扱いには十分、注意していただきたい。
キャッシュフローと聞いただけで足がすくむ人は、入り口から退散してもらっても構わない。「これでも社内公用語は英語だぞ」と自慢されても、そんなキモなど、ちいせぇちいせぇ。それほどの恐怖を味わっていただくことにしよう。
さて、冒頭で紹介したキャッシュフロー計算書は、企業が作成する財務諸表(決算書)の1つである。ただし、すべての企業に作成義務があるわけではない。非上場の、特に中小企業などには作成負担が重い財務諸表なので、会社法では免除されている(会社計算規則59条、61条)。
ところが、国際会計基準IFRSなどを意識した時代の要請というべきか、やたらと「キャッシュフロー経営を目指そう!」というスローガンを掲げる企業が多くなった。会計システムや情報システムでも中途半端にキャッシュフロー計算書を作成する機能が搭載されており、それがまた「キャッシュフロー分析」の本質を理解していないシステム屋が開発しているものだから、奇妙な分析結果が跳梁跋扈するようになっている。
キャッシュフローを舐めてもらっては困る、というのが、筆者から突きつける「キモ試し大会招待状」の売り言葉である。
花王の連結キャッシュフロー計算書から見る
3つの「なぜ」
最初に、トイレタリー関連では圧倒的な存在感を示す花王の連結キャッシュフロー計算書を〔図表 1〕に示す。これを見て、「もののけ」へのアレルギー体質があるかどうかを見極めるところから始めていただきたい。
〔図表 1〕は説明のしやすさに配慮して、筆者のほうで若干の補正を施している。〔図表 1〕の表示単位は「百万円」だが、本文での説明は「億円」で進めていく。