由規が出した「161キロ」も正確かどうかを詮索するより、それだけの剛速球を投げた事実を素直に評価すればいいのだ。150キロ前後のボールを投げられるのは特別な才能であり、常人の理解を超えた世界。それを目撃するのは驚きであり、お金を払って見るだけの価値がある。

 今季はセ・パともに激しい首位争いが行われているが、世間の盛り上がりは今ひとつ。それはプロの凄さをうまく伝えられていないメディアの責任もあるのではないか。

 仕事柄、一流投手の投球練習を間近で見る機会がある。捕手の後方から投球を見ると、シュルルと空気を切り裂く音とともにボールがもの凄い勢いで近づいてきて、捕手のミットにバッシーンと収まる。その迫力にはネット越しでも恐怖を感じる。そんなボールを投げる投手に畏敬の念を覚えると同時に、平然とキャッチする捕手も尊敬してしまう。また、そのボールを至近距離で待ち、打ち返す打者だって凄い。

 そうした凄さを目の当たりにした経験から、プロ野球選手に対してはリスペクトの思いがある。それを前提に記事を書いているのだが、文章ではその凄さが今ひとつ伝わりにくい。

映像ならではの利点を
もっと生かしてほしい

 映像なら、もっとストレートにその凄さが伝わるはずだ。たとえば春のキャンプの報道。各チームの主要投手の投球練習をアンパイアの視点にカメラを置いて見せるのも手だ。どの投手のストレートが一番凄みがあるのか、変化球のキレがあるのは誰なのか。見て実感できれば、試合に対する興味はかき立てられるはずだ。チーム関係者からすれば、球筋が明らかにしたくない思いがあるのかもしれないが、差し障りのない範囲で見せることはできるはずだ。

 また、打者の視点にカメラを置き、投球を見せてもいい。打者の目から150キロ前後のボールはどう見えているのか。それをどう打つのかをイメージできれば、プロ野球に対する関心も高まるのではないだろうか。

 現在のプロ野球報道を見ていると、インタビューなどでも選手を身近で親しめる存在といった取り上げ方が多い。それも悪くはないが、もっとプロの凄さを伝える工夫があってもいい。由規の「161キロ」のメディアの伝え方を見て、そんなことを感じた。