株主もブレストに巻き込んで楽しむ

【藤沢】カヤックをそのように面白く運営していて、会社のサイトもどんどん面白くなっていますけど、実際には今、上場企業じゃないですか。株主の反響とか、東京証券取引所からのご指導とかはないんですか?(笑)

【柳澤】株主のみなさんからは多くの意見を頂いておりますが、いろいろチャレンジングな企画を提案したいと思っています。

【藤沢】株主ともブレストはするんですか?

【柳澤】しますよ。今年は株主の中からご希望いただいたみなさんと合宿に行きます。あと自社サイトの中にも、株主会議という「株主SNS」のようなブレストの場があって、その中でアイデアを募っています。そこでいただいたアイデアは結構採用してるんですよ。

【藤沢】たとえばどんなアイデアが出るんですか?

【柳澤】採用のときは、「こんな採用キャンペーンがあったら面白い」っていうアイデアを考えていただきました。いろいろなものがありましたけど……1つは「佐藤採用」といって、佐藤という名字の人だけを採用するとか(笑)。そこにぼくらもちょっと味付けしないといけないと思って、面接官を全員佐藤さんにしたり、エントリーフォームの名字欄を「佐藤」で固定したりしましたね(笑)。

「責任者がいない組織」で、なぜうまくいく?

【藤沢】確かに面白い!

【柳澤】それで1人、採用されました。何気ないアイデアを拾うってことですよね。株主も参加できることで、楽しんでもらえるかなって。

【藤沢】楽しいでしょうね。今までの株主とのコミュニケーションってすごくお堅いものばかりだったじゃないですか。こういうコミュニケーションって今までなかったと思います。

【柳澤】ほかにも、株主総会を建長寺っていうお寺でやったりしていますね。そこでブレストも希望者と行っています。

【藤沢】ブレストは、決議の後にやるんですか?

【柳澤】初年度は決議の後、今年は決議の前にブレストをやりました。どっちがよいかは試行錯誤中です。

【藤沢】私もちょっと、株主になろう(笑)。こうやってステークホルダーがみんな巻き込まれていく感覚って、とても面白いと思います。

(第3回に続く)

「責任者がいない組織」で、なぜうまくいく?
藤沢久美(ふじさわ・くみ)
シンクタンク・ソフィアバンク代表
大学卒業後、国内外の投資運用会社勤務を経て、1996年に日本初の投資信託評価会社を起業。同社を世界的格付け会社スタンダード&プアーズに売却後、2000年にシンクタンク・ソフィアバンクの設立に参画。2013年、代表に就任。そのほか、静岡銀行、豊田通商などの企業の社外取締役、文部科学省参与、各種省庁審議会の委員などを務める。
2007年、ダボス会議(世界経済フォーラム主宰)「ヤング・グローバル・リーダー」、翌年には「グローバル・アジェンダ・カウンシル」メンバーに選出され、世界の首脳・経営者とも交流する機会を得ている。
テレビ番組「21世紀ビジネス塾」(NHK教育)キャスターを経験後、ネットラジオ「藤沢久美の社長Talk」パーソナリティとして、15年以上にわたり1000人を超えるトップリーダーに取材。大手からベンチャーまで、成長企業のリーダーたちに学ぶ「リーダー観察」をライフワークとしている。
著書に『なぜ、川崎モデルは成功したのか?』(実業之日本社)、『なぜ、御用聞きビジネスが伸びているのか』(ダイヤモンド社)など多数。
Facebook:https://www.facebook.com/kumi.fujisawa.official