大手電機メーカー蘭フィリップスは、中国での薄型テレビ事業のブランド使用権と販売網、在庫まで含めた資産を5年間、台湾TPVテクノロジーに事業譲渡することで基本合意した。
フィリップスは世界各地でテレビ事業を譲渡し、効率化を進めてきた。激しいシェア争いと日用品(コモディティ)化による価格下落で、事業そのものの収益性が悪化していたからだ。中国の薄型テレビ事業の譲渡も、この流れに沿ったかたちだ。
TPVはパソコン用のモニターや液晶テレビの受託製造で世界大手の企業。フィリップスをはじめソニーなど大手メーカーからテレビの製造を受託しており、大量製造によるコスト競争力も業界有数といわれる。フィリップスにとってTPVは譲渡先として最適と判断したのだろう。
この動きを前向きにとらえるのがシャープだ。もともとシャープはパネルの供給や委託生産などを通して、フィリップスのテレビ事業を側面からサポートしてきた。中国の薄型テレビ市場は2011年には北米市場を抜き、年間4500万台を販売する世界最大の市場となる。ところが、中国でのフィリップスのシェアはわずか1.0%(10年第2四半期、米調査会社ディスプレイサーチ調べ)で、ここ数年シェアは落ち続けていた。
それだけに、実力では申し分ないTPVがテコ入れすれば、中国でのフィリップスのシェアは拡大し、パネル取引も増える可能性があるとシャープはそろばんを弾く。
折しも、薄型テレビ用の液晶パネルは欧州の景気後退を端緒に需要が急減し、供給過多の状況。この影響をもろに受けたシャープは09年10月に稼働したばかりの大阪府堺市の新工場の稼働率を落としたばかりだ。期初予定どおりに稼働率が上がらなければ、即収益圧迫要因となる。
TPVの手によって中国でのフィリップスのシェアがどれだけ伸びるか──。シャープにとってそれは切実な問題なのである。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 片田江康男)