飼育方法の変化や、ペット医療の進歩などによって、長生きするペットが増えた。それに伴い、増えているのがペットの介護問題だ。夜鳴きなどの症状よって、愛犬を手放したり、高齢者が老犬・老猫を介護するという「老老介護」問題も発生している。深刻なペット介護の問題をレポートする。(ジャーナリスト 木原洋美)

泣く泣く愛犬の声帯を切除した
高齢者施設で暮らす女性

愛犬と一緒に死ぬしかない!“ペット老老介護”問題の深刻筆者の愛犬、もうすぐ9歳。おでこの辺り、だいぶ白髪が目立ってきた。いつかは介護が必要になるかも

「声を奪ってしまって、可哀そうなことしたかなぁって、今も思うのよ」

 関東の高齢者施設で暮らすチエコさん(仮名・92歳)は、2年前に亡くした愛犬コロについて話す時、どうしても涙ぐんでしまう。

 コロは柴犬のオス、チエコさんが中野のマンションで一人暮らしをしていた頃、知り合いのところに生まれた子犬を譲り受けた。

「小さくてコロコロしているから、あなたはコロよ」

 呼びかけると、まるで「わかりました」というように元気に吠えた姿を、昨日のことのように思い出す。

 夫に20年以上前に先立たれたチエコさんにとって、コロは実の子ども以上に可愛い家族。コロのおかげで、毎日たくさん歩いて、たくさん笑えたと、心の底から感謝している。

 幸福な毎日に陰りが差したのは4年前。コロに異変が起きた。

「おしっこを失敗したり、同じところをぐるぐるぐるぐる歩き回ったりして、ボケたかな、とは思っていたんだけど」

 ある夜いきなり夜鳴きがはじまった。

 叱っても、口を押さえても止まらない。いたたまれず抱き上げ、外へ飛び出した。