iPhoneがガラス筐体変更なら
ホンハイには大打撃
ホンハイは、シャープとの交渉の過程で、本体への出資額を1000億円減らす中でも、有機EL向けの投資金額を、2000億円から一切変更しなかった。
それは17年以降、アップルが有機ELを採用したiPhoneを発売する見通しのため、シャープを通じて、後発になってでも受注にこぎ着けたいからだ。
「LTPS、IGZO(酸化物半導体)、OLED(有機EL)があり、それらを組み合わせるなど、ディスプレイは競争の土俵が変わるようなタイミングにきている」(郭台銘会長)ことで、投資をためらっていては、失注につながるという危機感も後押しした。
だが、有機ELへの投資計画は、「中身を見ると、だいぶ楽観的」との声が業界関係者からは聞こえてくる。需給が逼迫している製造装置の確保も課題の一つで、そこでつまずけば、量産は20年以降にずれ込む可能性がある。
それでも、ホンハイが目の色を変えて、シャープのディスプレイ事業を手に入れたのには別の要因もあると、台湾の市場調査会社、イザヤ・リサーチのエリック・ツェン代表は話す。
それは、ホンハイグループが製造を担っているiPhoneの筐体(ケース)の仕様変更だ。17年以降、筐体を現在のアルミニウムから全面ガラスに変える計画があるという。
となると、ホンハイの子会社(鴻準精密)はガラスの精密加工の技術に乏しいことから、筐体製造の売り上げがすっぽりと抜け落ちるリスクがあり「ホンハイは収益源の多様化を急ぐ必要があった」と、ツェン氏は指摘する。ホンハイが、それだけアップルに依存する収益構造になっているともいえる。そこにシャープが加われば、その売上高以上に、依存リスクは一段と高まる。
さらに、シャープの持つ酸化物半導体の技術が、アップルとの関係強化につながるとの期待も見え隠れする。
詳しくは先の図を参照してほしいが、アップルはLTPSと酸化物半導体を組み合わせた「LTPO」と呼ぶ新たなディスプレイの回路基板の研究を、台湾などで目下進めている。
既存のディスプレイに比べて、高精細でかつ消費電力が少なくなると期待されており、有機ELパネルを中心に活用を進めようとしているわけだ。
特に、酸化物半導体の技術が開発のカギになるとされており、となると、ホンハイ・シャープ連合がさらに食い込む余地が多分にあるわけだ。