5月13日、みずほフィナンシャルグループは新たな中期経営計画を発表。当初の構想ではあまり強く打ち出すつもりがなかった、財務体質の強靭化を重要戦略に掲げた。その理由を財務データから読み解く。(「週刊ダイヤモンド」編集部 鈴木崇久)

 3月上旬の発表をターゲットに、新たな中期経営計画の策定を昨年から水面下で進めていた、みずほフィナンシャルグループ(FG)。

 ところが、発表まであと1カ月ほどというときに事件が起きた。2月16日から日本銀行がマイナス金利政策を導入したのだ。

 そのため、マイナス金利政策の影響を中計に反映せざるを得なくなった。銀行経営の最重要指標である金利の水準に大きなインパクトを与えるので、計画の前提条件が崩れてしまうからだ。結局、新中計の発表は予定から約2カ月遅れの5月13日となってしまった。

 ただ、実はみずほFGの中計は2月の時点で当初の構想と大きく違っていた。2015年秋ごろから原油価格の下落や中国経済の不安定化によって、経営環境が次第に傾きだしたからだ。そして、「極め付きがマイナス金利だった」(佐藤康博みずほFG社長)。

 その結果、みずほFGは今後3年間の“羅針盤”となる中計が指す方角を大きく転換。佐藤社長は、新中計に盛り込んだ戦略の中でも「『強靭な財務体質の確立』という戦略は当初これほど強く打ち出していなかった」と明かす。「(企業や事業を)どんどん買収して規模を拡大することよりも、そちらに優先順位の軸を移した」のだ。

財務体質の強靭化は銀行ビジネスからの脱却を示唆する

 そこで図(1)を見てほしい。みずほFGの財務体質を示した貸借対照表(バランスシート、BS)だ。

 注意が必要なのは、事業会社のBSとは左右逆のように映る点だ。事業会社は左の資産側に「現預金」、右の負債側に「借入金」がある。一方、銀行は顧客から資金を預かり、それを元手に融資をするので、左の資産側に「貸出金」、右の負債側に「預金」があるのだ。

 そして、みずほFGは貸出金と預金の中身を入れ替えることで、財務体質の強靭化を図る考えだ。