いかなる企業も損失を生じ、赤字に転落しただけでは倒産しない。理屈の上では、たとえ債務超過に陥ったとしても、株価が暴落して無価値に近づいたとしても、資金繰りがつきさえすれば倒産しない。

 しかし、現実には、実質破綻を疑われるような企業は、資金繰りのためのファイナンスなどできない。お金を貸してくれる銀行などないし、債券を発行しても買ってくれる投資家はいない。増資に応じてくれる投資家もいない。それどころか、債権者は必死の回収を図り、株主は株式を投売りし、それがますますその企業を追い詰めていき、資金繰りがショートしてしまう。

 その倒産の危機に瀕した(と市場から見られている)企業を、何らかの理由で救わなければならないとする。それには、施策の順番がある。この順番を間違うと、ステークホルダーたちの間で混乱を生じて救えるものも救えなくなる。

 第一に、流動性の供給手段を確保しなければならない。そうして資金繰りを保っておいて、第二に、大きく毀損しているであろう資本を注入、増強する段階に進む。このとき重要かつ難しいのは、資本注入の前提となる損失の確定と資本の必要額の算定である。

 第三に、その企業の経営、事業、組織の改革に入る。この段階では、経営責任や株主責任の明確化が必要になる。

 米国政府が、米連邦住宅抵当公社(ファニーメイ)と米連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)の緊急救済措置を発表した。FRBによる緊急融資と公的資金による資本注入の検討である。

 2公社の経営が悪化したのは、サブプライムローン問題で混乱、急落を続ける住宅ローン市場を救うために住宅ローンや証券化商品の買い取りを拡大したためだ。2008年第1四半期末で、2公社は米国の住宅ローン債権残高合計11兆2000億ドルの約43%を保有している。5兆ドルにも上る保有債権だけとっても、2公社の住宅ローン市場における重要な役割とともに巨額の不良債権を抱えているだろうことは、容易に想像できる。