世界中の富が吸い寄せられ
出口の見えない私的な「埋蔵金」へ

 しかも、公表されたパナマ文書は、氷山のごく一角に過ぎない。タックスヘイブンは今や主な国・地域だけでもケイマン諸島、ヴァージン諸島、香港、シンガポール、ルクセンブルグなど、国際金融市場の隅々へ浸透し、深く根を下ろしている。そのため、世界中の大企業をはじめ、個人でも「資産や所得を海外に移せる」レベル以上の富裕層にとっては、決して非合法ではなく、合法的な節税スキームとして利活用されている。

 しかし、「非合法ではなく、合法的」であるからこそ、問題なのである。企業が大きくなり、本社をタックスヘイブンに移すと、母国では税金が取れなくなるため、それだけ母国の税収は減り、不足する。所得や資産が増えた個人についても、タックスヘイブンにそれらを移して隠されると、母国での課税が難しくなる。世界経済の成長と発展とともに、国際社会はどれだけの大企業や富裕層を次々と誕生させてきたか、その数は計り知れないが、その多くがタックスヘイブンを直接的・間接的に利活用してきたことは間違いなかろう。

 本来は母国の税収を潤沢にするはずであった莫大な所得や資産の多くが雪崩を打ってタックスヘイブンに流れ、隠されて、そのほとんどが出口の見えない私的な「埋蔵金」と化して、迷宮入りしていく実態は看過できず、公益に反する反社会的な経済行為と言える。

 タックスヘイブンの起源は古く、19世紀にまで遡るが、国際社会の中でその存在と利活用が世界各国の税収を圧迫し、世界経済に悪影響を広げ、直接の被害が表面化してから半世紀余。IMF(国際通貨基金)によると、今や世界の銀行資産のうち半分以上が、また多国籍企業の海外投資のうち3分の1以上が、タックスヘイブンを経由していると見られている。

 IMFの2010年の発表では、南太平洋の島嶼地域におけるタックスヘイブンに限っても約18兆ドル(当時の円換算で1944兆円)もの資金が吸い寄せられていた、と見られている。これは、世界のGDP(国内総生産)のおよそ3分の1に相当する巨額な資金量である。国際NGO(非政府組織)の税公正ネットワークは、全世界のタックスヘイブンには2010年末時点で、およそ21兆ドル(同2270兆円)から32兆ドル(同3450兆円)もの金融資産が保有されていると分析している。

 さらに、欧州の大企業の99%がタックスヘイブンに子会社を保有している、とも報告している。米会計検査院も、アメリカの大企業の83%がタックスヘイブンに子会社を保有している、と発表している。世界経済にいかに多大な影響を与えていることか、想像に難くない。