「地方創生インターン」で参加者が得られるものとは?

熊谷 とはいえ、「地方創生」は学生にとっても興味深いテーマである一方で、壮大なテーマでもあり、具体的にとらえづらい部分もあると思います。今回の体験を通じて、参加した学生がどんなものを得られるのかを教えていただけませんか?

ソフトバンク・源田 インターンシップの意義は、「答え」のある課題をいかに効率よく解くかという「学生のときに求められる能力」と、課題を自ら設定して、今ある価値以上のものを生み出すという「社会に出てから求められる能力」の違いを知り、さらに磨いていくことだと僕は考えています。

「市の未来」という、これ以上ない「答えのない課題」とどう向き合うか。短期間ではありますが、市が本気で悩んでいる問題に対して、本当に困っている人たちに取材をして、解決策を立てる。この過程で「社会に出てから求められる能力」が大きく磨かれると思います。

熊谷 なるほど。「答えのない課題」に直面したときに解決策を見出す能力が鍛えられるわけですね。山田さんはどのように考えますか?

塩尻市・山田 私も同感ですね。ソフトバンクさんと組む前から、私は塩尻市でのインターンシップのコーディネーターを務めていました。その中で忘れられないくらい成長した女子学生がいたんです。国産材の木のおもちゃで日本一のシェアを誇る会社にインターンで入って、「塩尻市の保育園に木のおもちゃを導入しよう」というプロジェクトを6ヵ月間、頑張ってくれました。

 そして、そのプロジェクトは大成功して、会社も彼女もすごく喜んでくれたんです。それで、彼女は、もともとは東京の大手広告代理店に就職したいという希望を持っていたのですが、「自分の子どもは、自分が携わったおもちゃを使ってくれている塩尻の保育園で育てるって決めたんです」と言って、東京での就職を辞退してしまった。今は、長野の広告代理店で働いているんです。

熊谷 それは、すごい。インターンを通して、自分の生き方を見つけたんですね。

塩尻市・山田 そうなんです。もちろん参加してくれる学生だけではなく、塩尻市全体や受け入れ先の企業にとっても大きなメリットがあります。だから学生の皆さんにはどんどんチャレンジしてほしいですね。
塩尻市は今、「子育てしたくなるまち日本一」を目指しています。塩尻市でのインターンをきっかけに「自分の子どもは塩尻で育てる」と言ってくれた彼女は、自分の生き方を見つけましたし、塩尻市の中小企業、教育機関、市全体にとっても自らを活性化させる大きな一歩になったんです。

熊谷 その彼女自身が、もともと何か手ごたえのあるものを強く求めていたからこそ、インターンシップを通じて、そのような化学反応が起こったんでしょうね。今回の「地方創生インターン」も、本当にやる気のある学生が求めていたものだなと思います。

 そもそも、インターンシップには「採用」と「教育」という2つの機能がありますが、学生側から見ても企業側から見ても、意識がどうしても「採用」のほうに偏ってしまうんですよね。両者のニーズが合致しているので、決して悪いことではないんですけど、やっぱり「教育」の機能が果たし切れていない分、学生は成長の実感を得ることができずに、歯がゆい思いを残してしまうケースもあります。

 でも「地方創生インターン」では、「自分の提案が事業化され、市の未来を救う可能性がある」という緊張感が学生を成長させるし、「答えのない課題」を考える力も身につく。「教育」の機能を十分に果たしている、素晴らしいプログラムだと感じます。

ソフトバンク・源田 ありがとうございます。