なぜ「インターンシップ」で地方創生に取り組むのか?

熊谷 市の未来を、まったく違う土地から来る大学生とともに考えるというのは、思い切った取り組みですよね。「地方創生インターンシップ」はどのようにして生まれたんですか?

源田泰之(げんだ・やすゆき)ソフトバンク株式会社 採用・人材開発統括部長。1998年入社。営業を経験後、2008年より現職。採用責任者、およびグループ社員向けのソフトバンクユニバーシティ及び後継者育成機関であるソフトバンクアカデミア、新規事業提案制度(ソフトバンクイノベンチャー)の事務局責任者。ソフトバンクユニバーシティでは、経営理念の実現に向けて社員への研修を企画し、社内認定講師制度などのユニークな人材育成の制度を運用。ソフトバンクグループ株式会社・人事部アカデミア推進グループ、SBイノベンチャー管理部長を務める。また、大学でのキャリア講義や人材育成に関する講演実績など多数。

ソフトバンク・源田 実は今年の1月、弊社とリクルートさんの社員の育成を目的として、塩尻市さんの課題を解決していこうというプロジェクトをすでに立ち上げているんですよ。「MICHIKARA(ミチカラ)」というものです。これが私たちの社員にとっても塩尻市さんにとっても大好評で。

 こんなに有効であるならば、パワーのある学生でプロジェクトを組んだらより大きな力になるだろうし、学生にとってもその後の人生においてプラスの経験になるだろうと考えて、山田さんに「地方創生インターン」を立ち上げないかと相談をしました。すぐにOKをいただけましたね。

塩尻市・山田 二つ返事でしたね。もう、素晴らしいご提案だと。

ソフトバンク・源田 実は、社員が取り組む「MICHIKARA」を立ち上げるまでは、「市の問題解決」ってどんなものなのかが、正直よくわからなかったんですよね。企業の場合は、営業利益を上げるために課題設定をする。でも市の場合は、「活気あふれる街」「住みやすい街」「毎日わくわく、楽しく生きている人がたくさんいる街」をつくるための課題設定が求められますよね。ゴールとなる問題も、その問題を解決するための課題の置き方も、企業と行政ではまるで違う。

「企業の問題解決」のやり方が行政に通用するのか、半信半疑の中でプロジェクトを立ち上げたんです。でも、結果はドンピシャではまりました。
参加した社員たちも、社会貢献に直結するテーマに取り組むから、すごくモチベーションが上がったんですよ。今回、パワーあふれる学生たちが取り組んだらどうなってしまうのか、ぜひ見てみたいです。

熊谷 楽しみですね。5年ほど前まで、大学生の間では、アフリカやアジアの貧しい国に学校を建てにいくような「国際協力」がブームでした。「日本は豊かだけど、世界には貧しい国がまだまだあるよね。なんとかしたい」という問題意識が、大学生の間で高かったんです。

 しかし、ここ2~3年は、学生の間でも地方創生の機運が高まっています。「世界の中で、日本が徐々に力を失っている」という現実の中で、「地方から盛り上げよう」「地元に帰って力になりたい」という若者はすごく増えているんですね。

 でも、そうは言っても、地方の実家のほうに戻ってインターンシップがあるかというと、なかなかない。あっても1dayだったり、会議室で数日間研修を受けるだけだったりで、就業体験のようなものはほとんどない。
だから学生自身も、「地方を盛り上げたい」という情熱をどこにぶつけていいのかわからないという状況が起こっているんですよ。今回の取り組みは、その情熱を持った学生がどんどん応募してくると思います。

塩尻市・山田 そうなると嬉しいですね。