まったく計算しないと、どうなる?

久保田 競
(Kisou Kubota)
京都大学名誉教授、医学博士。世界で最も権威がある脳の学会「米国神経科学会」で行った研究発表は、日本人最多の100点以上にのぼり、現代日本において「脳、特に前頭前野の構造・機能」研究の権威。2011年、瑞宝中綬章受章。1932年、大阪生まれ。著書に、『1歳からみるみる頭がよくなる51の方法』『赤ちゃん教育――頭のいい子は歩くまでに決まる』『あなたの脳が9割変わる! 超「朝活」法』(以上、ダイヤモンド社)などベスト&ロングセラー多数。

 一方、まったく計算をしないと、計算脳は大きくなりません。

 2ヵ月も脳を使わないと、繋がりがどんどん減っていきます。

 60歳以上になっても計算をしなければ、計算二ューロンの数も減っていくと思われています。

 人の「数ニューロン」の減少は報告されていませんが、計算脳が縮小する可能性があることは、大脳皮質の機能的核磁気共鳴装置写真を見れば、容易にわかることです。

 しかし、まだ、計算脳の加齢による変化の報告はありません。

 計算脳の研究が増えてきて、2015年からメタ・アナリシス(後解析)の論文が出るようになりました。

 メタ・アナリシスとは、コンピュータ時代になってから行われるようになった研究法で、自分では実際の研究はやらずに、同じテーマ出された研究論文の内容を検討して、何が正しいか、正しくないかを決めていくものです。

 ここで多くの研究者が確認したことが、正しいことになっていきます。

 新しく視覚に関係した領域が後部計算脳に加えられるようになっていますし、前頭前野の周辺にある領域(たとえば、側坐核)が加えられるようになっています。

 知能指数(IQ)や作業記憶など行動を調べた研究がありますが、算数の能力と知能指数との関係は、否定されていく傾向があります。

早期から暗算をすれば、
誰でも天才になれる

 算数能力の発達については、入学時に高い小学生は高学年になっても高いですし、入学時に低い小学生は、高学年になっても低い傾向があります。

 この傾向を否定する研究はまだ現れていません。

 徐々に幼稚園児での研究も出てきていますが、能力の分布の傾向は変わっていません。

 ですから、低年齢児のときの数学能力によって、高年齢児の数学能力が予測できるという考えは、強固なものになってきているのです。

『小学校前にみるみる算数力がつく15の習慣』では、天才脳については、アインシュタインひとりしか取り上げられませんでしたが、これを覆す天才脳の資料が増えてこないと、私の考えも変わることはありません。

数が言えるようになったら、暗算をすれば誰でも天才になれるという考えは、当分変える必要はないのです。