英国や米国で進んでいる格差拡大の原因としては、グローバル化のみならずデジタル化という構造変化も指摘できます。意外と看過されがちですが、デジタル化のペースはこの10年で一気に加速しました。世界初のスマホ(iPhone)が登場したのが2007年、フェイスブックが商用サービスを開始したのが2006年、ツイッターが始まったのが2007年、Airbnbは2007年に起業、世界初のタブレット(iPad)が登場したのは2010年、3Dプリンターが普及したのはつい最近、といった事実からもそれは明らかです。

 かつ、アラブの春やアップルのサプライチェーンなどから明らかなように、デジタル化がグローバル化を更に加速している面は否定できません。つまり、この10年で世の中の変化のペースはすごく速くなったのです。

 その一方で、グローバルなレベルで社会保障、教育、コミュニティといった社会システムはそれに見合ったペースで進化できていないからこそ、英国や米国で一般大衆が公平性をより強く主張するようになっている面は否定できないのではないでしょうか。エリート層が弱体化し、構造変化のペースに社会の制度や仕組みを追いつかせることができていないからこそ、英国はEU離脱となり、米国ではトランプ旋風が起きていると考えられるのです。

 そうしたエリート層の弱体化は、例えば米国の有名シンクタンクがTPPの米国経済にもたらす影響を分析したレポートにも現れています。このレポートは、

・TPPは2030年までに米国経済に年間1310億ドル(米国GDPの0.5%)の所得増をもたらす

・一方で、5万3700人の米国人が仕事を変えることを余儀なくされるが、もともと米国では年間5500万人が仕事を変えているので、大した影響ではない

 と述べていますが、その5万人強の人やその親族、友人にとっては、これは大変な問題です。かつ、工場の海外流出や移民増加などグローバル化による地域コミュニティの変化には、より多くの人が懸念を抱くはずです。

 だからこそ、米国のメディアには、グローバル化によって自分の仕事にはまったく影響がなくても、知り合いがリストラされたり地域コミュニティが衰退したりといった理由でトランプ支持を表明する人がよく登場するのです。