日本銀行が、「包括緩和」と自称する追加金融緩和に踏み切った。白川方明総裁 は、それを“異例の措置”だと説明した。

  “異例”とは何を意味するのだろうか。

 これまでと同質の政策を続けるのだが、その規模を異例なほど拡大したということなのか。そうではなくて、これまでとは異質の政策に転換したのか。それも、もしかしたら中央銀行が本来踏み入れてはならない異端の道に進んだという意味なのか。

 「包括緩和」は、三点からなっている。

 第一は、金利操作の対象(政策金利)である無担保コール翌日物の誘導目標を、0.1%から0~0.1%に引き下げるという決定である。

 これは、「実質的なゼロ金利」というこれまでの政策を、市場により鮮烈に印象付けるための明確化措置と言える。「実質的なゼロ金利政策」自体が異例ではあるのだが、規定路線の延長である。

 第二は、その実質的なゼロ金利政策を、「消費者物価指数上昇率が1%程度になると見込めるまで継続する」と表明したことだ。

 より正確に言えば、日銀は政策委員が「物価が安定していると考える水準」を発表している。言わば、中央銀行として望ましい物価水準であり、「消費者物価指数上昇率が2%以下のプラスで、中心が1%」と数値化されている。それを実現するまで事実上のゼロ金利政策を続ける、と約束したのである。

 現在、消費者物価指数上昇率は、マイナスが続いている。つまり、デフレである。だから、日銀はデフレ脱却に向けて、これまで以上に強いコミットメントを行ったということである。目標が達成されるまで約束した常態を続けることを「時間軸政策」と呼ぶ。言い換えるなら、「消費者物価指数上昇率0~2%」を目標としたフレキシブル・インフレーション・ターゲティングである。これも、より鮮明な表明になっているが、従来路線の明確化である。

 ちなみに、フレキシブル・インフレーション・ターゲティングは、この9月26日――「包括緩和」決定の9日前――『中央銀行の役割~バブル・金融危機・デフレの経験を踏まえて~』と題した講演のなかで、白川総裁が使った言葉である。白川総裁は、英国をはじめとするインフレーション・ターゲティング採用国では、厳格な数値目標と機械的な運営から脱して柔軟性を強調する方向にあり、一方、日本や米国のように採用していない国でも中期的に見て望ましい物価安定の数値を公表、互いに手法は似通ってきている、と解説した。