“100年に一度”の経済危機が続くなか、直近では経済専門家の多くが、「景気はおおむね今年後半に底入れする」という見通しを唱え始めている。

 主な理由としては、オバマ米国新大統領や中国当局による本格的な景気対策の効果、日銀を含む各国中央銀行の金融緩和策の効果などが挙げられることが多い。

 では、いつ終わるともわからない「景気悪化懸念」が巷に蔓延するなか、ここに来て世の中が期待し始めた「年後半の景気底入れ」は、本当なのだろうか? 今回は、その“現実性”について分析してみよう。

 振り返れば、昨年9月のリーマン・ブラザーズの破綻をきっかけに、世界経済は坂を転げ落ちるように悪化した。リーマン・ブラザーズの破綻によって金融市場で大規模な信用収縮が発生し、それが世界経済の牽引役だった米国経済を直撃したからだ。

 家計部門は、信用収縮によって、それまで予想だにしなかった打撃を受けた。従来、米国の多くの家計は、将来もらえるはずの収入を当てにして、クレジットカードやローンで欲しいものを、欲しいだけ買っていた。

 ところが、お金を貸す方の金融機関が信用の供与を絞ったため、必要なお金を借りることは難しくなった。車を買うにも、オートローンを組みにくい。住宅ローンを借りることは、さらに困難な状況になってしまった。

 それに追い討ちをかけたのが、株価や住宅価格の下落による“負の資産効果”であり、企業のリストラ圧力だ。特に、雇用環境の悪化のスピードは凄まじかった。昨年10月以降、リストラが一段と本格化したこともあり、昨年1年間で、非農業部門の雇用者数は250万人以上減少した。

「年後半に底入れ」は楽観的か?
これだけある景気低迷の不安要素

 このような現状を考えれば、米国の個人消費が落ち込むのは当然だ。昨年12月の米小売売上高は、前月比マイナス2.7%の大幅下落を記録した。家計を取り巻く経済環境が改善しない限り、米国の消費はそう簡単に回復しないだろう。最大の需要者である米国の個人消費が急減速すると、世界経済の下落は避けられない。

 この米国発の金融危機により、輸出依存度の高いわが国の経済が、“世界経済の原則”によって大きな痛手を受けたのは、周知の事実である。稼ぎ頭だった自動車や家電、機械、電子部品などの業界が、輸出減少と円高の逆風をまともに受け、現在、主力輸出企業は“総崩れ”状態だ。