「孤独な老後」を過ごすか
対策を講じ夫婦円満な生活か

 実は孝博さんも、自分の状態に不安を感じていた。

「体内時計が極端に変化してきました。海外旅行に行った際、現地時間に合せて時計の針を調整しますよね。あんな感じで、自分の入眠起床時間が大胆に動いてしまった印象です。特に春から夏にかけては、夜明けと共に目が覚め、夜は大好きな野球中継が終了する前に睡魔に襲われるようになってきたので正直困っています。健康的なのでいいことだと、自分に言い聞かせていますが、妻は相当迷惑そうなので、いずれ怒りを爆発させるのではとドキドキしています」

 不安は的中している。加寿子さんの不満大爆発はもはや時間の問題。

 とりあえず、孝博さんの選択肢は以下の3つしかない。

(1)妻に早世され、孤独な老後を過ごす
(2)妻から熟年離婚を宣告され、孤独な老後を過ごす
(3)対策を講じ、夫婦円満な生活を続ける

 迷うまでもない。賢明な読者なら、(3)を選ぶはずだ。

 まずは、自分自身の体内時計を調整しよう。

 睡眠の名医によると、体内時計の調整には「光」のコントロールが効くらしい。

「早起きして、散歩や庭仕事をする際には、サングラスをかけて光が目に入るのを遮るとよいでしょう。体内時計は光の影響を受けるので、早朝はできるだけ太陽光を浴びないようにするのです」

 さらに大切なのは、夫婦の寝室だ。

夫婦別室の就寝が夫婦円満の秘訣
睡眠の専門家が語るのは、なぜ

「熟年夫婦の寝室は、別々にするのが理想」と、睡眠の専門家は誰もが口をそろえる。

「奥さんは、ご主人の早寝早起きに合せようとしてはいけません。寿命を縮めます。眠くもないのに、早めに寝床に入る行為は、眠れずに悶々とする時間を作り、不眠恐怖症型不眠の原因にもなります」

 夫婦別室での就寝は、熟年離婚の前兆と心配するむきもあるだろうが、実は、夫婦別室こそが、夫婦の健康と円満の秘訣なのだ。

 熟年夫婦のみなさんには、安心して、夫婦別室を実行してほしい。

「それではお互い、体調に異変が起きた際、気づかないかもしれないと心配な場合は、室内を本棚等のパーテーションで区切り、半別室にするのもいいですよ。とにかく、お互いの体内時計を尊重する意識が重要です」

 これなら、実践のハードルはぐんと下がるのではないだろうか。

 ちなみに加寿子さん夫婦は、この夏から夫婦別室を実践し始めた。ただし、就寝時には部屋の扉を開けておき、お互いの寝息を常に意識している。寒い季節にどうするかは、現在思案中だ。

「長年一緒に暮らしてきたのに、まさか睡眠時間で時差ができるなんて、意外でした。だけど、夫婦のほどよい距離間を見直す、いい機会になった気がします」

 気持ちも体調も楽になり、加寿子さんは爽やかに笑った。