収入のメドがないのなら、支出を抑制して生活するしかないだろう。しかしU容疑者は、2016年3月と6月に顔の美容整形手術を受けている。費用は、3月の手術が50万円であったという(『NEWSポストセブン』記事)。「財源」が退職金だったのか借金だったのかは不明だが、ともあれ3月24日時点、U容疑者の手持ち金は、預貯金を含めて3万円台以下になっていたはずだ。そうでなければ生活保護は開始されない。

 また、6月の美容整形手術費用は25万円だった。失業手当を手術で使い切り、U容疑者は「スッカラカン」になっていたのではないだろうか? もしも近所の顔見知りの青年だったら「ご飯、食べてる?」と聞きたい感じだ。

 ともあれ、「スッカラカン」になったU容疑者には、「もう一度、生活保護で暮らし、人生を立て直す」という選択肢があったはずだ。しかし、その選択は行われず、犯行が行われてしまった。

U容疑者の生活保護に
違法性はなかったか?

 U容疑者の生活保護受給歴が報道されるや否や、「不正受給ではないか?」という疑問がネット空間に数多く出現した。

 典型的な疑問のいくつかに対して、不正受給かどうかを検証してみよう。

Q1:五体満足、介護職ならば再就職は可能そうなU容疑者が、なぜ生活保護を受けられたのでしょうか?

A1:失業しており、給料(収入)のメドがなく、預貯金を含めた手持ち金(資産)が極めて少なかったためでしょう。生活保護の対象となるかどうかは、収入と資産だけで決まります。

Q2:U容疑者の収入や資産の調査は、きちんと行われたのでしょうか? 自動車も所有していたようですが? 数百万円の借金があるのに、生活保護を受けてよかったのですか?

A2:正当に行われ、その結果として生活保護開始となったのでしょう。通常、収入・資産に関する調査は、生活保護を申請してから開始決定までの期間(原則2週間)で行われます。自動車は、今後の就職活動や通院での必要性、失業手当が受給できるため今回の生活保護はごく短期で終わる可能性などを考慮し、「すぐに処分を」という話にはならなかったものと思われます。借金があるなら、債務を整理して生活を再建するために、生活保護は非常に有効な手段です。

Q3:U容疑者は父親の持ち家に住んでいました(両親は別の地域に在住)。父親は、安定した高収入の職に就いており、母親も働いています。この両親は、息子を扶養すべきでした。生活保護ケースワーカーは、両親に扶養を求めるべきではなかったでしょうか?

A3:私は、家族扶養には反対の立場です。それはさておき、U容疑者の両親は、息子が生活保護を申請した事実を知っているはずです。また、扶養の依頼(扶養照会)も行われているはずです。

 生活保護を申請すると、少なくとも親子きょうだいには「あなたの息子(例)の◯さんが生活保護を申請しています」という通知が送付されます。また、保護開始となる場合には、「息子(例)の◯さんに、同居や仕送りや精神的ケアなど、何らかの形で扶養はできないでしょうか?」という問い合わせ(扶養照会)も送付されます。今回、どのような「扶養」も行われなかったのであれば、最も可能性が高い理由は、「そもそも生活保護が短期間だったため、両親による扶養の必要性が発生しなかった」でしょう。

 U容疑者は、2016年3月24日に生活保護を申請し、即日、保護開始となりました。差し迫った「お金がない」という事実が認められたためと思われます。この場合、資産や家庭状況に関する詳しい調査は後日となりますが、申請時に事情の聞き取りは行われているはずです。11日後の4月3日に最初の生活保護費の支払いが行われていたこと、また生活保護打ち切りまでの経緯から見て、本人の話と事実との間に大きな食い違いはなかったのでしょう。