地元ファンは安堵の表情を浮かべるが、球団経営再建の課題は横たわったまま
Photo:JIJI
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横浜ベイスターズの買収問題で、親会社のTBSと交渉を続けていた住生活グループが買収断念を発表した。交渉は順調に進んでいると見られていたが、急転直下の結末を迎えた裏には何があったのか。
「TBSが提示した金額はフェアでこちらが値切ることはなかった。ただ、いいチームにしようといろいろ構想を練っていたが、前提条件が付いてなにもできなかった」。住生活の潮田洋一郎会長は、言葉の端々に悔しさをにじませた。
前提条件の最たるものが、本拠地だ。住生活側は球団が一新したイメージを打ち出すのに最適だと、静岡への移転を打診していたとされるが、TBSは横浜から移さないことを条件にしていた。
だが、横浜スタジアムを使い続ける以上、広告や物販収入は球場側にしか入らず、年間使用料は8億円に上る。今年は、10年ごとの球場使用の見直し時期に当たっているが、地元行政からの支援や改善策の提案もなく、「恒常的な経営改善は見込めない」(潮田会長)と判断した。
住生活側は、「多くのファンを魅了するようにフロント、選手育成のやり方すべてを含めてゼロからやりたかった」(同)とするなど、抜本的な経営刷新を目指していたものの、現状維持を望んでいたとされるTBSとの溝は埋まらなかった模様だ。
住生活の誤算は、ブランドの浸透が球団買収の動機として前面に出たことで、一部のファンや地元行政から予想以上の反発を食らったことだ。M&Aを繰り返し、企業規模を拡大してきた同社にとって、プロ球団の買収も同様だと考えていたフシがある。
今回の失敗を受けて、住生活はブランド戦略の見直しを一から迫られることになった。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 柳澤里佳)