苦労して軌道に乗せた工場に立ち退き要求?
地方政府の台所事情に振り回される日系企業

 最近、華東地域の沿岸部で「工場の立ち退き」を要求されるケースが増えている。

 数年前に進出したばかりで、苦労を重ねてようやく工場が軌道に乗り始めたところで、「2ヵ月以内に出て行ってください」と立退きを要求される企業もある。こんな形で立ち退きを要求されるなど、日系企業にとっては空いた口が塞がらないだろう。

 これまで工場を積極的に誘致して、土地使用権の販売収入、税収などで収益を上げてきた地方政府も、余っている土地がなくなり、土地利用権の販売収入が期待できなくなっているのが現状だ。

 「これはまずい」ということで地方政府が考えたのが、「工場用地」をできるだけ安い価格で買い戻し、より高い価格で「住宅地、商業地」として売ることで収入を得るという作戦だ。

 日本であれば、「地方政府は地域企業のビジネス環境を長期的な視点で整備する役割を担うべきなのに、そんなに数年でコロコロ方針を変えられたら、ビジネスなどできない」と怒るだろう。

 しかし、中国では地方政府も立派な「事業」であるし、ドッグイヤーで成長を続ける中国では、「2年もすれば環境がガラリと変わるので、方針も変わるのは当たり前」というところだろうか。

 では、自分の会社が地元政府から「立ち退き通知」を受けた場合には、どうすればいいのだろうか。こんな理不尽な立ち退きには応じず、居座る方法はないのだろうか。

 当然、中国でも「立ち退かない」という選択肢もある。知らない方も多いかもしれないが、中国でも私有財産は法律法規上守られている(2007年に私有財産を守ることを取り決めた「物権法」が施行されている)。